独自技術CFBを進化させて小口径と大口径ウェハの異種材料集積を実現
OKIは6月23日、半導体などの結晶薄膜(Crystal Film)を剥離し、接着剤不要で異なる材料の基板やウェハに直接接合する異種材料集積デバイス実現技術「CFB:Crystal Film Bonding)」を活用した「タイリングCFB技術」を開発し、小口径の光半導体ウェハと300mmシリコンウェハという異種材料集積を可能としたことを発表した。
AIのさらなる活用のためには、半導体の高性能化に伴う消費電力の増大を抑制することが求められてるようになってきており、その解決策の1つとして、電子回路と光回路を融合させた光電融合技術の活用が期待されている。中でもシリコンウェハ上に光半導体のような異種材料を集積させることは、シリコンフォトニクスと光半導体の融合による性能向上につながるとされている。
しかし、シリコンフォトニクスには300mmもしくは200mmのシリコンウェハが用いられるが、InPなどの多くの化合物ベースの光半導体ウェハはエピタキシャル成長の難しさから2インチ(50mm)~4インチ(100mm)ほどの小口径ウェハで製造されており、そのサイズ違いやシリコン光導波路に対するナノスケールの粗さ制御に伴うダメージを与えない異種材料集積プロセスの実現が求められていた。
2インチのInPウェハから300mmシリコンウェハへの転写を実現
今回開発されたタイリングCFB技術は、そうした異なるウェハサイズ間で生じるギャップを克服し、ダメージなく異種材料の集積を可能とするもので、同社の取り組みでは2インチInPウェハ1枚から300mmシリコンウェハ全面に52回のタイリングが可能であること、転写後のInPウェハがそのまま再利用可能であること、位置精度は±約1μmで角度精度±約0.005°であることを確認。同社独自のシリコンフォトニクス技術「立体交差導波路」と組み合わせることで、光半導体とシリコン導波路間の高効率な光結合を実現できることも示されたという。
実際に行われた実証実験では、2インチInPウェハ上に犠牲層および光半導体として機能するInP系結晶薄膜をエピタキシャル成長させた後に素子ごとに分離。各素子には、犠牲層エッチング時の薬液浸食から保護するための保護構造と、一括転写用の支持体を形成することで、InP系結晶薄膜素子が浸食されることなく中間転写基板への一括転写を実現したとする。
この中間転写基板への一括転写は、シリコンウェハを除去プロセス中のダメージから保護することを目的としたもので、中間転写基板上で保護構造と支持体を除去することで、これらの除去プロセスでシリコンウェハへダメージがおよぶことはないことを確認したとするほか、中間転写基板の独自構造により、保護構造および支持体の除去プロセス時にInP系結晶薄膜素子が剥がれず接合状態を維持し、転写時にはInP系結晶薄膜素子を容易に転写することが可能であることを確認したとする。
転写作業は量産適用可能な約10分を達成
さらに、中間転写基板から必要な素子のみ選択的に転写できる構造を取り入れた「CFBスタンプ」を用いて繰り返し転写を行うことで、300mmシリコンウェハ全面へのタイリングCFB技術を実現。このスタンプ技術は、中間転写基板上に高密度ピッチで配置された素子アレイから、デバイスに必要な低密度ピッチの素子アレイを繰り返し転写できるため、材料を無駄なく活用でき、今回の実証実験では、30mm×30mmのサイズのスタンプを活用することで、300mmシリコンウェハ全面へ転写作業を52回、作業時間にして約10分で終えることができたという。
なお、今回開発されたタイリングCFB技術は、3インチや4インチのInPウェハや200mmシリコンウェハなどにも対応可能としているほか、既存の光半導体製品にも応用できるため、高放熱基板への転写による性能向上や、大口径化による生産性向上を図ることも可能になるとしている。