IHIと野村不動産は4月16日、共同開発した大規模物流施設「Landport横浜杉田」においてメディア向け内覧会を開催した。同施設は2025年3月末に竣工、4月18日にはオープニングイベントも実施される。

内覧会には、IHI 社会基盤事業領域 都市開発SBU 事業企画推進グループ 須﨑佑大氏、野村不動産 都市開発第二事業本部 物流事業部 佐久間淳一氏が参加し、「Landport横浜杉田」の概要や「2025年の崖」「ポスト2024年問題」といった物流業界の課題の現状を説明した。

  • 竣工した「Landport横浜杉田」

    竣工した「Landport横浜杉田」

物流業界の「ポスト2024年問題」

経済界全体の課題として、数年前から注目されている「2025年の崖」。これは、経済産業省が「DXレポート」においてデジタル技術の導入が遅れている日本企業が2025年以降の競争力維持において深刻な課題を抱える可能性を警告したもので、特にレガシーシステムの継続使用やDX(デジタルトランスフォーメーション)の不十分な進行が、年間で約12兆円の経済損失を生む恐れがあると指摘されている。

物流業界は「2025年の崖」の流れの中で、働き方改革関連法による残業時間制限に向き合うことで発生する課題である「ポスト2024年問題」の影響大きく受けるとして、デジタル化の遅れが課題に直結していると考えられている。

ポスト2024年問題の解決に向けて、物流業界には「デジタル化の必要性認識」「技術を生かした対応」「技術を含む物流人材育成」の3点に期待が寄せられているという。

これらの期待に応え、ポスト2024年問題をあらゆる目線で解決する施設として竣工されたのが「Landport横浜杉田」だ。

「Landport横浜杉田」の概要

Landport横浜杉田は、野村不動産とIHIが共同開発で実現した、「OPEN SHERE」=「オープン・シェア型物流施設(地域協創型の物流施設)」をコンセプトとした次世代型物流施設。「OPEN SHERE」というコンセプトは、「施設利用者×地域関係者×地域社会」が豊かになることを目指す施設づくりの取り組みを表している。

首都高湾岸線 杉田インターチェンジから680メートルと神奈川方面・都内配送にも適した立地であることに加え、横浜港から15キロメートル圏内に位置しているため、輸出入貨物の保管・配送にも適している。また、JR新杉田駅から徒歩圏内と、雇用環境にとっても優れた立地となっている。

Landport横浜杉田は、3PL(サード・パーティー・ロジスティクス)企業・荷主企業をはじめ、物流事業者が向き合わなければならない物流課題である、物流コストおよび労働者負荷の低減に向けて、物流施設開発の事業者が寄り添うことで推進する仕組みを提案していく。

「社会・業界のエコシステム化への期待を背に、サプライチェーン維持のために、自動倉庫・機器の自動化・シェアリングなど、さまざまな課題解決に対する答えを込めた施設として、Landport横浜杉田を竣工しました」(佐久間氏)

  • Landport横浜杉田のコンセプトを説明する佐久間氏

    Landport横浜杉田のコンセプトを説明する佐久間氏

さらに同施設では、立体自動倉庫の実装、自動化機器のシェアリングにより物流効率化を可能にしているという特色もあり、地域向けサービスも実施予定だという。

特に「立体自動倉庫シェアリングサービス」は、「繁忙期/閑散期に対応した高効率な倉庫運用を行いたい」「事業戦略に合わせて倉庫容量・庫内作業を最適化したい」という顧客の事業課題に柔軟に対応するもの。

  • 「立体自動倉庫シェアリングサービス」のイメージ

    「立体自動倉庫シェアリングサービス」のイメージ

同サービスを活用することで、顧客は、波動に伴う倉庫面積の最適化によるコスト圧縮、作業減によるコスト圧縮に加えて、自動倉庫導入に伴う高額投資も不要となるという。

「真の地域連携」を生む物流施設に

同施設は、さまざまなリソースをオープンにし、利害関係者がつながりながら、シェアしていくことにより成長の好循環を生む「真の地域連携」を生む物流施設として、さまざまな施策を展開する。

例えば、同施設は地域社会のインフラ機能(防災・コミュニティ・経済基盤など)を果たすため、横浜市金沢区と防災協定を締結し、「津波避難施設」の登録を受けている。これによって、災害時には地域住民 約1000人が避難することが可能だという。

さらに、防災拠点として非常時に機能するためには、日常から施設が利用され、防災機能を持った施設であることを広く認知される必要がある、という考えのもと、地域住民が施設を訪れる機会や施設を知るきっかけを創出する。

具体的には、地域に開いた外構広場として、杉田梅の正木および苗木の植栽スペースを設置して文化復興に協力するほか、東側ランプ下に誰でも利用可能な休憩室を用意することで、日常時・イベント時に地域住民が集まれるスペースを確保している。

  • 杉田梅の正木および苗木の植栽スペースが設置されている

    杉田梅の正木および苗木の植栽スペースが設置されている

「物流施設のディベロッパーとして、真の地域の連携・振興に貢献できる施設開発を行うことで、地域に愛される施設として住民・企業・自治体をつなぎ、ビジネス・地域雇用などを創出できる施設づくりをLandport横浜杉田で実現していきます」(須﨑氏)

  • 地域のとの関わり方を説明する須﨑氏

    地域のとの関わり方を説明する須﨑氏