いよいよ4月に開幕を迎える2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)。続々とパビリオン完成の報告が届き始めた。その中でも最大規模のサイズを誇る「未来の都市」パビリオンの完成披露式典が、3月10日に執り行われた。

「Society 5.0の未来社会」をテーマとする同パビリオンは、その名の通りに未来の都市がどのような姿であるかを考えさせる展示が目白押しだ。本稿では、先んじてメディア向けに公開された「未来の都市」パビリオンの完成式典の模様をレポートする。

  • 「未来の都市」パビリオン完成記念式典

    「未来の都市」パビリオン完成記念式典

大阪湾・明石海峡を臨む最大規模のパビリオンが完成

パビリオンは万博を主催する2025年日本国際博覧会協会に加え、KDDI、日立製作所、クボタなど、12社の協賛企業らの協力により設立。万博会場の最西端に位置し、大阪湾を目前に構える。

パビリオンの中には、サイバー空間と現実の空間が融合した「Society 5.0」の未来社会を体験できる各社の最新技術が並ぶ。パビリオンの完成を記念する式典には博覧会関係者と協賛12社の代表者らが出席し、テープカットが行われた。

その他の協賛企業は以下の通り。
川崎重工業
神戸製鋼所
日本特殊陶業
商船三井
カナデビア
IHI
青木あすなろ建設および小松製作所
CPコンクリートコンソーシアム
関西電力送配電

  • 万博協会および協賛企業代表によりテープカットが行われた

    万博協会および協賛企業代表によりテープカットが行われた

「未来の都市」パビリオンが示す3つの魅力とは?

2025年日本国際博覧会協会 事務総長(代表理事)の石毛博行氏は「未来の都市パビリオンは、企業や団体の垣根を超えた他に例のない協力形態で共同作業を進め完成した。大きく3つの魅力があると感じている。それは、万博内で最大級のパビリオンである点、日本を代表する企業や団体が、まさに万博のコンセプトである『未来社会の実験場』を表現するべく新たな共創にチャレンジした点、子供や学生が遊びながら学べるパビリオンになった点だ」と挨拶を述べた。

同氏によると、3月上旬時点で学校団体からの予約が最も多いのが未来の都市パビリオンだという。

  • 2025年日本国際博覧会協会 事務総長(代表理事) 石毛博行氏

    2025年日本国際博覧会協会 事務総長(代表理事) 石毛博行氏

また、協賛企業を代表して、クボタの代表取締役社長を務める北尾裕一氏は「パビリオンが目指す『未来社会の実験場』の意味を協賛決定から今日まで考えてきた。2025年日本国際博覧会協会と協賛12社で1つのストーリーを作り上げるかつてない試みは、万博が目指す共創をまさしく体現したものであり、大きなチャレンジとなった」と振り返った。

続けて、「Society 5.0の未来ではどんな知恵が出され、どんな幸せが生まれるのか。私たち企業はどんな知恵やテクノロジーで社会課題を解決し乗り越えていくのか。その問いに向き合い続けた答えの一つがこのパビリオン。子供だけでなく大人にも見て、触れて、感じていただき、新たな行動が生まれ、多くの笑顔と幸せをもたらすことを祈念したい」とコメントした。

  • クボタ 代表取締役社長 北尾裕一氏

    クボタ 代表取締役社長 北尾裕一氏

テープカットには、先日社長交代が発表され、4月から代表取締役社長 CEOに就任する予定のKDDI取締役執行役員常務 松田浩路氏の姿もあった。

  • KDDI 取締役執行役員常務 CDO 先端技術統括本部長 兼 先端技術企画本部長 松田浩路氏

    KDDI 取締役執行役員常務 CDO 先端技術統括本部長 兼 先端技術企画本部長 松田浩路氏(右から2人目)

時間によって変わる幻想的なメッシュ膜の外観

建物は全長約150メートルの大きさもさることながら、折り紙や扇を彷彿とさせるギザギザとした外観も特徴だ。外壁表面はメッシュ地の二重の被膜によっておおわれており、見る角度や時間帯によってモアレ模様(メッシュ膜の重なりにより生まれる視覚的な縞模様)が生み出される。建物は膜構造とシステムトラスを採用したことで、地盤が弱いとされる夢洲エリアで重量を抑え、さらに工期も短縮した。

  • パビリオン外観のモアレ模様

    パビリオン外観のモアレ模様

日中は純白の表面と大阪湾のコントラストがまぶしく輝く。少し日がかげると明石海峡のサンセットに照らされた姿が臨める。建物の足元からはミストが噴出しており、幻想的にゆれるモアレ模様を一層見ごたえのある外観に仕上げる。夜には建物自体が照明装置として多様な光を演出する。

  • ミストの噴出による演出も

    ミストの噴出による演出も

建物の外側をおおうメッシュ膜は光触媒を採用し、日光に当たると汚れを分解する。雨が降れば雨水と一緒に汚れが流れる仕組みだ。また、NOx(窒素酸化物)も軽減できるという。

また、建物外構の床舗装にはパビリオン建設時の余剰生コンクリートをリサイクル。このコンクリートは二酸化炭素を吸収する「CARBON POOLコンクリート」を使用した。また、建物は二酸化炭素濃度を計測して換気量を抑制する、10分後の室温を予測して空調機の無駄な運転を抑制する、といった複数のエネルギー消費削減のための仕掛けを備えている。