OpenAIが独自設計したAI半導体をTSMCに製造委託することを計画しているとReutersなどの海外メディアが報じている。

それらによると、OpenAIは今後数か月のうちに社内での設計を終え(テープアウト)し、TSMCでの製造に回す予定だという。製造プロセスとしては、先端となる3nm(N3)プロセスとされており、Samsung Electronicsのファウンドリ事業であるSamsung Foundryの第2世代3nm GAAプロセス(SF3)も比較対象となったが、歩留まりなどの問題を考慮した結果、TSMCのN3を採用することになった模様である。

METAやGoogle、AWSなどもすでに独自開発のAI半導体を活用しており、OpenAIが自社開発のAI半導体を利用しようとする取り組みは特段、珍しい動きではない。いわゆるASIC(Application Specific Integrated Circuit、特定用途向け半導体)と呼ばれる部類の半導体で、GPUのような汎用的なロジック半導体などと比べて、自社のニーズに応じた機能だけを盛り込めることがメリットだが、半導体ビジネスは数が出ないと儲からない(OpenAIの場合は、社内利用が主だと思われるため、投資に対するリターン)ため、それに見合うだけの、数万個とも数十万個とも言われるだけの数を生産する必要があり、そのためには相応のコストを費やす必要がある点がデメリットとなる。

ただし、AI半導体分野においてはNVIDIAのAI向けGPUの価格が非常に高いこともあり、性能が設計要求通りに出るASICをそれなりの数を用意する方向性であれば、そのコスト効率はGPUと比べても高くなることが考えられる。

AI半導体という大規模かつ高性能な演算性能を持たせることが必要とされるため、HBMを組み合わせる形でTSMCが得意とする後工程技術であるCoWoSなども活用されるとみられるが、さまざまな複雑な機能を集積し、数十億トランジスタといった大規模回路の製造には少なくとも数か月かかるとされている(ラインの空具合などの兼ね合いも含め、状況次第では1年近くかかる場合もあると言われる)。

OpenAIはかねてより、2026年には独自の半導体を活用したいという意向を持っており、今回の取り組みは、そうした2026年中に実際の半導体デバイスとして自社で活用するためのスケジュールに沿った取り組みと考えられる。もし、最終的な性能評価などにおいて要求仕様通りの性能が出なかった場合、不具合の内容次第であるが、設計段階まで立ち戻り、再び数か月以上かけて製造を行う必要もでてくるリスクが生じることとなる(半導体製造に必要なマスクなども作り直しとなるため、コストもかさんでいくこととなる)が、それでも2025年の早いタイミングで製造に入ることができれば、そうした修正にかかる時間的なリスクを軽減することができる。具体的にどのような特徴や性能を持たせたAI半導体が出てくるかは不透明だが、相応の性能を発揮することができれば、NVIDIAとの交渉などでも優位に働く可能性も考えられる。