田中貴金属工業は1月31日、高いX線不透過性を有するとされるプラチナ(Pt)合金からなるワイヤなどの医療機器部材用貴金属素材群を、「Visi Fine」シリーズとして展開することを発表した。

  • 「Visi Fine」のブランドロゴ

    医療機器部材用貴金属素材シリーズ「Visi Fine」のブランドロゴ(出所:田中貴金属工業)

素材開発力を活かし高信頼性の素材群を展開

近年の医療現場では、患者の身体への負担を軽減し傷口を最小限に抑える、低侵襲・非侵襲的な手術および治療がトレンドとなっている。これらの手法で主に用いられるカテーテル治療デバイスや医療用体内留置デバイス(以下「治療デバイス」)に対しては、患部への正確なアプローチや、体内組織との反応性の低さが求められるとのこと。また治療デバイスの体内での正確な位置を把握するため、X線照射したでの視認性も重要な要素だという。

そうした背景から、比較的比重が大きくX線不透過性が高い金(Au)やPtなどの貴金属は、酸化や腐食に強い特徴も持つため、治療デバイス部材用の素材として活用が広がっている。ただし、医療機器用部材に使用される素材には高い信頼性が求められるうえ、適用する部材に応じたさまざまな加工や素材のカスタマイズが求められる。

田中貴金属は、長年の素材開発で培われた知見を活かし、複数の溶解技術や極細線加工、レーザ加工などの独自技術を駆使することで、貴金属の特性を最大限に生かした信頼性の高い素材群を提供できるとのこと。そして今般、Visi Fineシリーズとしての展開を決定したとする。

  • Precious Metal Fine Wire

    Visi FineシリーズのPrecious Metal Fine Wire(出所:田中貴金属工業)

なお、ブランド名であるVisi Fineは、“見える”を意味する「Visi」と“細かく洗練された素材”を意味する「Fine」を組み合わせた造語で、X線不透過性に優れた物質を、高度な加工技術を駆使して高信頼性の医療機器用部材に最適な素材に仕上げて提供する、という想いが込められているとした。

田中貴金属はVisi Fineについて、2月4日から6日まで米国・カリフォルニア州アナハイムで開催される医療機器関連分野の展示会「MD&M West 2025」に同シリーズとして初めて出展するとのこと。同社は、産業用貴金属製品のリーディングカンパニーとして、医療・ヘルスケア業界の技術発展に貢献していくとしている。