田中貴金属グループは、産業用貴金属事業を展開する田中貴金属工業が、中国の関連会社である成都光明派特貴金属と燃料電池用電極触媒製造技術に関する技術援助契約を締結したことを発表した。

成都光明派特貴金属の子会社で、2024年夏に本格稼働を予定している雅安光明派特貴金属の工場内に生産設備を設置し、2025年より中国向け燃料電池用電極触媒の生産を開始する予定で、これにより増加する中国での燃料電池用電極触媒需要に対応するという。

中国は政府の方針として水素エネルギーや燃料電池車(FCV)を戦略産業として掲げ、育成を目指しており、中国政府も燃料電池技術の研究開発や普及を促進に向けた支援策を実施するなど取り組んでおり、そうした補助金や税制優遇措置などによりFCV車両の開発と導入が推進されている。また、都市部および主要交通路にて水素供給インフラの整備が進められており、今後のさらなる燃料電池市場の成長が期待できる状況にあることが背景にあるという。

また、欧米でも電動車の導入に向けた取り組みが進められているほか、日本でも2022年9月より経済産業省と水素供給側・自動車メーカー側・物流事業者側・地方自治体などの関係者がモビリティにおける水素の普及に向けて検討を進めており、2023年7月の中間とりまとめでは、燃料電池を搭載したトラックやバスを早期普及させる「重点地域」を2023年度中に選定するとした発表もなされている。

現在、田中貴金属工業の湘南工場内のFC触媒開発センターにて、固体高分子型燃料電池用(PEFC)および固体高分子型水電解用(PEWE)の電極触媒の開発と製造が行われており、PEFCのカソード向けには高活性・高耐久な白金触媒や白金合金触媒を、アノード向けには耐一酸化炭素(CO)被毒特性に優れた白金合金触媒やOER触媒、PEWE用アノードには酸化イリジウム触媒が販売されているが、今回の取り組みを含め、今後も燃料電池用電極触媒の安定供給を実現するとともに、引き続き研究開発に注力し、燃料電池用電極触媒のリーディングカンパニーとして、燃料電池の普及と水素社会の実現を目指していくと同社ではコメントしている。

  • 固体高分子型燃料電池用(PEFC)電極触媒

    固体高分子型燃料電池用(PEFC)電極触媒 (出所:田中貴金属工業)