GlobalFoundries(GF)とIBMは1月2日(米国時間)、両社が係争中の訴訟で和解に達し、両社間の契約違反、企業秘密、知的財産権の申し立てを含むすべての訴訟問題が解決したことを発表した。

この和解により、進行中の法的紛争が終結し、両社は相互に関心のある分野での新たなコラボレーションの機会を模索できるようになったという。和解条件の詳細は公開されていない。

両社が「相互に利益のある分野で新たな協力の機会を模索する」ことで合意したことは注目に値する。これは、紛争の解決にとどまらず、両社の関係が開発協業など建設的な方向に進展する可能性を示している。米中の半導体覇権をめぐる争いが激化する中で、米国企業同士の和解・協力は米国内半導体製造強化政策推進の立場から米国政府も歓迎している。

泥沼となっていたIBMとGFの訴訟合戦の和解はラピダスにとっては朗報

IBMとGFのややこしい関係は、IBMが半導体の製造事業をGFに譲渡することを決めた2014年後半にさかのぼる。この譲渡の見返りとして、GFは2015年から10年間にわたり、IBMの半導体製品向けに14nmプロセス技術、ならびに10nm未満の微細プロセス技術の開発を約束しており、この実現のために必要なIBMの多数の研究成果や数千件の特許IPなどの知的財産もGFに譲渡された。

ところがGFは、IBMの所望する性能が出せる14nmプロセスを開発できず、結局はSamsung Electronicsの協力を得て製造にこぎつけた。その後、GFは14nmでの後れを取り戻すため10nmをスキップして7nmに移行しようとしたが、開発の難航などもあり2018年8月に7nmプロセス以降の開発を無期延期(事実上の撤退)を決め、複数のプロセス技術者の解雇も行われた。結局IBMは7nmプロセスの製造委託先をSamsungに変更することとなった。

IBMは2021年、ニューヨーク州裁判所にGFの先端プロセス開発の契約不履行により25億ドルの損害賠償を求める訴訟を起こした。一方のGFも、2023年にIBMが2021年と2022年にIntelとラピダスとそれぞれ発表した提携に対し、GFとIBMが共同開発した機密情報および知的財産をIntelとラピダスに不当に開示したとして訴訟を起こした。ラピダスに関する争点は、同社とIBMが共同開発している2nmプロセス技術にIBM/GFが共同管理する企業秘密やIPが含まれているという点であり、企業秘密の不正流用疑惑がかかっていたということである。

さらに、GFはIBMがGFの知的財産からのライセンス収入を増やすために半導体製造にかかわる優秀なエンジニアの一部をターゲットにし「組織的な引き抜き」を行っていると非難した。GFは、これは単なる人材の流出ではなく、知的財産の損失であると主張して訴訟を起こしていた。

今回の和解は、これらの訴訟すべてが対象と見られるが、和解条件については一切公表しないとしている。和解条件に左右される両社の関係が今後どのように進展するかは未知数であるが、建設的な発展を遂げることが期待される。また、ラピダスにとってもIBMからの2nmプロセスの技術移転に法的な懸念がなくなったことは朗報となるだろう。同様に、先端プロセスで苦戦するIntelにとっても、IBMから法的な支障なく援助の手が差し伸べられる可能性も出てきたといえる。

  • ラピダスがIBMと共同で試作した2nm GAAウェハ

    ラピダスがIBMと共同で試作した2nm GAAウェハ (SEMICON Japan 2024にて編集部撮影)