米国の半導体市場調査・コンサルティング会社であるSemiconductor Intelligence(SI)のBill Jewell社長が2024年の半導体市場の総括を発表した。

それによると、AI関連(GPU)や付随するメモリは活況であった一方、それ以外の分野は(第1~3四半期累計で前年同期比10.5%減を記録。自動車・産業向け半導体分野の減速が大きかったが、ハイエンドスマートフォン(スマホ)向けプロセッサはプラス成長を遂げたとしている。

NVIDIAとメモリを除いた半導体市場は減速気味

世界半導体市場統計(WSTS)が12月に発表した最新の2024年半導体市場成長率は前年比19%増と力強いが、製品カテゴリ別で見ると偏りが見られる

。例えばメモリは同81%増と予測されているほか、ロジックも同16.9%増と手堅い。マイクロ(MPU/MCU)も同3.9%増とプラス成長が見込まれるが、ディスクリート、オプト、センサ、アナログはいずれもマイナス成長が予測されている。これを踏まえると、メモリを除いた成長率は同5.8%増に留まる。

メモリの中でもDRAMの伸びが顕著であり、TrendForceの予測では2024年のDRAM平均価格の上昇率は53%とされている。けん引役はHBMで、2023年と2024年の最初の9か月の売上高を比較するとメモリ企業全体で97%増、NVIDIAが135%増だが、半導体市場全体は約20%増に留まり、メモリ企業を除いた場合は同6.8%増、さらにNVIDIAも除いた場合は同10.5%減とマイナス成長となる。自動車ならびに産業セクターの低迷が主な要因で、これらの市場を軸とする企業としては、STMicroelectronics、Analog Devices、Texas Instruments、Infineon Technologies、NXP Semiconductors、ルネサス エレクトロニクスなどが挙げられる。

  • 2023年と2024年の9か月累計売上高比較

    上からメモリメーカー、NVIDIA、半導体業界全体、メモリメーカーを除く半導体業界、さらにNVIDIAも除いた半導体業界の2023年と2024年の1~9月期の累計売上高(単位:10億ドル)と成長率(%) (出所:SI)

2025年の成長率は6%ほどと予測

AIとメモリを除いた2024年の半導体市場は弱含みとなったが、2025年についてSIでは、同6%増との予測を示している。この予測の前提としては、PC、スマホ、自動車、産業など各市場がある程度回復傾向を示すことだが、その一方で同氏は「2024年に大きく伸びたメモリとAI関連の成長率だが、2025年には伸びは低下するはず」との見方も示している。

メモリ市場は長い間、シリコンサイクルの好不調の波を大きくさせる要因として認識されてきた。過去10年間でも2023年には33%減だったのか2024年には81%増と極端に推移。メモリを除いた場合は2%減から25%増なので、市場の振れ方を大きくしていることがわかる。

  • 1984年から2024年までの40年間のシリコンサイクル

    1984年から2024年までの40年間のシリコンサイクル (出所:WSTS実績データを基にSI作成、ただし2024年はWSTS予測)

メモリ市場の動きを見ると、50%を超す成長率を記録した年の翌年、もしくは翌々年には大幅なマイナス成長も記録するということが見えてくる。これらの傾向は、需要と供給の問題にあり、こうしたこれまでの流れを踏まえるならば、「2025年または2026年にメモリ市場は大きく落ち込むことが予想される」と同氏は見ている。