Rapidus(ラピダス)は12月18日、同社が北海道千歳市で建設を進める最先端半導体の開発・生産拠点「IIM-1」に、蘭・ASML製のEUV露光装置「NXE:3800E」を搬入し、設置作業を開始したことを発表した。

またラピダスは同日これを記念して、新千歳空港ポルトムホールにて記念式典を開催。ラピダスの小池淳義代表取締役社長や、ASMLのジム・クーンメンEVP兼CCO(Chief Customer Officer)などが登壇し、IIM-1建設の現状や今回導入されたEUV装置の概要、および今後の展望について語られた。

  • 記念式典の様子

    新千歳空港ポルトムホームにて行われた記念式典の様子

国内初の量産対応EUV装置導入で先端半導体量産実現へ

EUVリソグラフィは、ラピダスが目指す2nm世代半導体の実現に向けて重要な技術のひとつとされており、特にリソグラフィ工程は、2nm世代のGAA(ゲートオールアラウンド)構造を形成する要となる工程だ。2nm以前の半導体製造プロセスにおいては、ArF(193nm)液浸露光技術が最先端とされていたが、2nm世代以降ではEUV(13.5nm)による短波長化が不可欠になるとされている。

しかしEUVリソグラフィ技術を実現するためには、従来とは異なる方式の光源・光学系・フォトマスクを採用する必要が生じる。そこで今回ラピダスは、反射型のフォトマスクとミラーレンズを用いた光学系を採用したASMLのEUV露光装置を導入したとのこと。位置合わせとスキャンを別々のステージで行うTWINSCANプラットフォームを採用し、微細化への対応と生産性向上の両立を実現しているという。

なおラピダスは、最先端半導体の量産に対応したEUV露光装置の導入は国内初の事例としており、同装置を皮切りにIIM-1には、2nm世代半導体を実現するための多くの半導体製造装置および搬送システムが導入される予定だとする。

  • 搬出されるASML製露光装置

    新千歳空港にてIIM-1に向けて搬出されるASML製露光装置(提供:Rapidus)

同社の小池社長は、NXE:3800Eの導入検討にあたって来日したASML前社長兼CTO(Chief Technology Officer)のマルティン・ファン デン ブリンク氏による工場見学時を振り返り、「事前の入念な検討に加えて、2時間半ほどにわたる見学ののちに、ようやくEUV露光装置の設置ができるという答えが返ってきた」と話す。

小池社長「現時点のIIM-1建設進捗度は約88%」

なお今後は、2025年4月には同拠点のクリーンルームにおける約半分のスペースを用いてパイロットラインの稼働を開始させるとしており、すべての製造装置において枚葉プロセスを導入し、新たな半導体ファンドリサービス「RUMS(Rapid and Unified Manufacturing Service)の構築を進めるとしている。また2027年の開始を予定する量産化に向けては、ウェハ搬送経路としてロボットが縦横無尽に動ける体制を構築し、現在主流となっているループ型搬送路に比べて搬送装置の異常発生時における生産へのダメージを抑えるなど、より優れた量産体制を目指すとした。

ラピダスが公開したNXE:3800Eの日本への輸送イメージ映像(提供:Rapidus)

小池社長は、「ラピダスとして掲げている目標から見れば、まだ現状は“登山の1合目”でしかない」と気を引き締めつつも、「北海道、あるいは日本から世界中に向けて最先端半導体を提供していくために、今回の装置導入は最初の大きな一歩である」とコメント。そして現時点でのIIM-1建設の進捗度について「およそ88%」と順調に進行しているとしたうえで、今後も「世界中の優秀な人材が集まる拠点にすることを目指し、まずはパイロットライン稼働に向けた準備を進めていく」と話した。

  • ラピダスの小池淳義代表取締役社長

    記念式典に登壇したラピダスの小池淳義代表取締役社長

  • ASMLのジム・クーンメンEVP兼CCO

    記念式典に登壇したASMLのジム・クーンメンEVP兼CCO