SK hynixは、トリプルレベルセル(TLC)ベースの1Tビット321層4D NANDフラッシュメモリの量産を開始し、2025年上半期より顧客への提供を開始する計画であることを発表した。4D NANDは同社独自の呼称で、周辺回路(ペリフェラル)の直上にセルアレイを積層することでシリコンダイ面積を削減した3D NAND構造を指している。

  • 321層1TビットNANDチップ
  • 321層1TビットNANDチップ
  • SK hynixが量産を開始した321層1TビットNANDチップ

すでに同社は2023年6月に238層の4D NANDの供給を開始。今回の300層を超える積層について同社は、基板の層を貫通し、一度にセルを作製する垂直の孔(プラグ)を活用した「3プラグ」工程技術を採用することで実現したという。同工程は、3回のプラグ工程を終えた後、最適化された後続の工程を通じて3つのプラグを電気的に接続するというもので、この工程のために同社は、プラグの材料を変更して応力を低くし、ウェハの反りを防ぎ、プラグ間のアラインメントを自動的に補正する技術を導入したとしている。

また、238層NANDと同じ開発プラットフォームを321層NANDにも採用することで、プロセスの切り替えによる影響を最小限に抑え、前世代と比較して生産性を59%向上させたという。この321層製品について、同社では前世代比でデータ転送速度が12%、読み取り性能が13%向上したとするほか、データ読み取り電力効率も10%以上向上したとしている。

同社では主なターゲットとして、低消費電力と高性能が求められるAIアプリケーションを想定しており、同社のNAND開発責任者であるチョイ・ジョンダル氏は、「321層NANDの開発により、SK hynixはAIデータセンターやオンデバイスAI向けSSDに代表されるAIストレージ市場のリーダーシップに一歩近づくことになる。HBMがけん引するDRAM事業に加えて、高性能NAND分野にも競争力のある製品ポートフォリオを追加することで、フルスタックAIメモリプロバイダの実現に向けて順調に進んでいる」と述べている。

すでに同社は競合のSamsung ElectronicsにHBMで差をつけているが、321層品の市場投入によりNAND市場でもSamsungに差をつけようとしており、これによりAIメモリ分野でのトップに立とうと目論んでいる。対するSamsungはHBMへの取り組み遅れで、SK hynixの後塵を拝しており、このような事態を引き起こした複数の幹部が2024年末までにリストラされると言われているが、NANDでもSK hynixに先行され、差をつけられることとなると、さらに厳しい立場に追い込まれることとなるとみられる。韓国メディアの中には、そうした現状を踏まえ、Samsungのプロセスエンジニアが数百人規模でSK hynixの求人に応募していることを報じているところも出ている。