Space BDは、同社が提供する国際宇宙ステーション(ISS)日本実験棟「きぼう」を活用したライフサイエンス事業において、インテージヘルスケアとの共同研究によるAI創薬実現に向けたサンプル、および学習院高等科・女子高等科の高校生が行った実験サンプルなどをドラゴン補給船に搭載し、SpaceX「Falcon 9」ロケットによって打ち上げられたことを発表した。
“AI創薬×宇宙実験”の実用化へ共同研究を実施中
Space BDはこれまで、ライフサイエンス事業において5回の打ち上げ支援を実施しており、打ち上げたサンプル数の合計は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)によるアカデミア公募案件の約480、およびSpace BDとして受託した有償利用サンプルの37に上るという。そして今回のサンプルは、SpaceXが運用する「NASA(米国航空宇宙局) 31st Commercial Resupply Service mission (SpX-31)」として11月5日の11時29分(日本標準時)に打ち上げられた。
Space BDとインテージヘルスケアは、2022年に共同研究契約を締結し、“AI創薬×宇宙実験”という珍しい取り組みを進めてきた。両社によると、ISSの微小重力環境を活用することで地上実験では得られない高品質なタンパク質結晶が生成され、緻密な構造情報を取得できるという。
今回の取り組みでは、宇宙実験により得られる精密な構造情報を、世界でも注目されるAI創薬技術と融合させることで、化合物の最適化技術の開発を進めるとのこと。これにより、AI創薬モデルの精度向上に大きく貢献することが期待されるとしている。そして将来的には、宇宙実験を用いた創薬研究への参画を促し、創薬研究における開発コストと期間の効率化に貢献することで、宇宙実験が持つ可能性のすそ野を広げていくことを目指すとしている。
高校生向けには地上と宇宙のサンプル比較実験を予定
またSpace BDは学習院大学との間で、2022年3月に産学連携協定を締結しており、その協力内容の1つとして、同大学理学部が提供する一貫教育プログラムのうち、高等科・女子高等科の生徒を対象とした企画「タンパク質結晶化ワークショップ」を2024年4月に実施している。
同ワークショップには高校生20名が参加し、タンパク質の結晶化実験を実施したという。そして今回打ち上げられたサンプルの帰還後には、地上で実験したサンプルと宇宙環境で実験したサンプルを比較する実験を予定しているとのことだ。