米国商務省産業安全保障局(BIS)は11月1日(米国時間)、GlobalFoundries(GF)に対して、輸出管理規則(EAR)に違反し、中国企業に半導体を出荷したとして、50万ドルの民事上の罰金を科したと発表した。

  • 米国商務省産業BISによるリリース

    米国商務省産業BISによるリリース

それによると、GFは2021年2月から2022年10月にかけて、EAR上のエンティティリストに掲載されている中国のSJ Semiconductor(SJS)に対して、BISの許可を取得せずに総額約1710万ドル相当の半導体ウェハ合計5697枚を74回にわたって出荷したという。

エンティティリストは、米国政府が「米国の国家安全保障または外交政策上の利益に反する行為に携わっている、またはその恐れがある」と判断した団体や個人を掲載したもので、それらに米国の製品(ソフトや技術を含む)を輸出などする場合、BISの事前許可が必要となる。SJSは半導体大手SMICの関連企業で、2020年に中国政府の軍民融合戦略への加担などを理由にリストに記載された。

GFは違反当時、SJSへのEAR対象品目の輸出には、事前の輸出許可が必要だと認識していたが、直接の取引相手ではなく、GFのある取引相手(生産委託元)が、一般的には半導体の組み立てやテスト作業などを委託するサードパーティだったことなどから、GFによる取引先審査から漏れたという。しかし、BISは、GFは出荷先を審査すべき立場にあり、それを怠ったと判断している。

ただしGFは、BISに対して違反行為を自主的に開示したほか、BISの輸出執行局(OEE)ボストン現地事務所による調査にも協力し、是正措置を講じたことから、罰金の減額が認められたという。

TSMCもHuaweiへの半導体出荷疑惑で捜査の可能性

また米国は、中国に対する高性能半導体の輸出を、自国のみならず米国製の半導体製造装置を使っている外国企業に対しても制限する措置をとっており、台湾TSMCもその対象になっている。しかし、半導体リバースエンジニアリング企業の加TechInsightsがHuaweiのAI半導体「Ascend 910B」を分解調査した結果、プロセスデザインなどからTSMCが製造したことが判明したという。

Huaweiは、BISのエンティティリストに記載されているが、同社は2020年に規制対象となって以降、TSMCに製造委託をしたことはないとしており、当初はTSMCもHuaweiへの出荷を否定していた。しかし、一連の報道の直後、TSMCが中国の半導体設計会社「SOPHGO」への半導体の出荷を停止したことが判明している。

一部の米国メディアがSOPHGOは、輸出規制の対象となっている半導体流通の仲介役として、TSMCに製造委託した半導体をHuaweiに流したと報じているが、SOPHGOはHuaweiと無関係であるとする声明を出している。

SOPHGOは、北京や上海など中国内の10以上の都市に拠点を有するほか、中国外にも拠点を構えるファブレスIC企業で、RISC-VやTPUなどの研究、開発、応用に重点を置いている。同社の設立者であるMicree Zhan氏は仮想通貨マイニング用ハードウェアを開発する「BITMAIN」の設立者としても知られているが、同社は2021年、台湾の半導体研究者を違法に採用して研究活動に携わらせていたことが明らかになっている。

なお、米商務省は、TSMCのSOPHGOへの出荷中止の報告は受けているが、この件を捜査対象にしているか否かは現代段階では明らかにしないとコメントしている。