NVIDIAの主要なAI半導体を活用したクラウドサービスの利用コストは米国よりも中国の方が安い状態となっており、この事態は米国政府が中国に対して先端プロセスを活用した高性能AI半導体の輸出規制を行っているにもかかわらず、そうしたAI半導体が中国市場に普及・活用されていることを示しているとした内容を英Financial Timesが報じている。
こうしたNVIDIAのAI半導体活用は以前から噂として中国内でささやかれていたようで、中国の企業や顧客が同紙に語ったところによると、中国の小規模クラウドプロバイダー4社は、基本構成で8基のNVIDIA A100プロセッサを搭載したサーバーの使用料として、地元の技術グループに1時間あたり約6ドルを請求しているという。一方、米国では同様の小規模クラウドベンダーが、同様の構成で1時間あたり約10ドルの使用料を請求しているという。この価格差は中国にNVIDIAのAI半導体が豊富に供給されていることを意味し、中国による先端技術へのアクセスを阻止することを目指した米国政府の一連の措置が回避されていることを意味するという。
例えばNVIDIAは2022年秋以降、A100の中国への出荷を禁止されており、H100の販売も許可されていない。しかし、半導体チップの再販業者や新興技術企業は、これらの製品の調達は比較的容易だと述べているほか、中国のソーシャルメディアやECサイト、電子機器市場などにて海外の価格よりも若干高い価格ではあるがA100やH100を販売していることが確認されているという。
こうしたNVIDIAのAI半導体は、密輸業者が国境を越えて運ぶことに比較的容易と言われており、中国の小規模クラウドベンダーの責任者は、密輸されたNVIDIAのAI半導体には相応の費用を支払うことになるが、中国内のエンジニアの賃金は安く、電力も安いため、相殺が可能だとしている。ただし、その分、競争が激しい状態にあるともしている。
中国への輸送経路としては、海外の業者がサーバやプロセッサを香港に移送し、その後、深センに持ち込まれるケースが多いという。また、中国企業がそうした先端AI半導体を直接購入することは難しいが、海外に新会社を設立する形で購入することはできるとされる。
米国の対中半導体輸出規制は、中国への直接輸出は制限できても、こうした第三国のブローカー経由の販売や密輸まで取り締まるのは難しい模様である。また、中国勢も独自のAI半導体の開発・製造を推進しており、例えばHuaweiがH100に匹敵する
そうこうしている間に中Huaweiは、H100に匹敵するとうたう独自開発のAI半導体「Ascend 910C」を開発。間もなく中国市場に投入する予定だという。