Vicorは10月16日(米国時間)、自動車OEMおよびTier-1が2025年に量産を予定している48V電気自動車(EV)システム向けとなる車載グレード電源モジュール「BCM6135」、「DCM3735」、「PRM3735」を発表した。
これらの電源モジュールには、AEC-Q100認証取得済みの同社独自設計のICが活用されており、複数の自動車顧客とPPAPプロセスが完了済みだとのことで、これにより自動車メーカーは、車両全体の電源システムのサイズと重量を減らすことができる新しい可能性を、手に入れることができると同社では説明している。
中間バスコンバータ「BCMシリーズ」に属するBCM6135は、変換効率98%、出力電力2.5kWで、トラクションバッテリーの800Vから安全超低電圧(SELV)の48Vに変換し、車両に供給することを可能とする電源モジュール。高電圧と低電圧の間は絶縁されており、DC-DCコンバータのスペースを小さくできる点が特徴で、電力密度が158kW/Lと高いため、EV電源システムの1段めのDC-DCコンバータのサイズを小さくでき、車両重量を軽減することができるという。また、双方向電圧変換ができ、負荷電流の過渡応答速度が8MA/秒と速いため、25ポンドの48Vバッテリーを同製品に置き換えることができ、xEVの仮想48Vバッテリーとして使うことができるため、コストと重量を減らすことができるという。
DC-DCコンバータ「DCMシリーズ」に属するDCM3735は、出力電力2.0kW、安定化していない48Vを入力して12Vの安定化出力電圧に変換することを可能とする電源モジュール。入力電圧範囲が広いためさまざまな自動車アプリケーションに対応でき、出力電圧は8~16Vの範囲で調整可能。電力密度が300kW/Lと高いため、ゾーンECUアプリケーションで48Vのバス電圧を12Vサブシステムにブリッジするアーキテクチャに対しての活用が期待できるという。
48V電源用の昇降圧レギュレータ「PRMシリーズ」に属するPRM3735は、変換効率99.2%、出力電力2.5kWで、電力密度が260kW/Lと高いため、DC-DCコンバータ全体を小型、軽量化することができる電源モジュール。安定化した電源が必要な48V負荷へ給電する用途に最適だと同社では説明している。
同社では、これらのモジュールを組み合わせることで、300通りを超える構成が可能となり、さまざまな革新的な車両サブシステムへ向けて、高いフレキシビリティとスケーラビリティを提供することができるようになると説明しているほか、市場の12Vから48Vのゾーンアーキテクチャへ移行にあたって、これらのモジュールを使うことで48Vへの変換と48Vからの電力変換を高い効率で実現できるとしている。
また、3つのモジュールは、いずれも並列接続して電力容量を増やすことができるほか、並列接続された各モジュールは、最適に性能が出るように自動的に電流バランスを取ることができるため、800V、400V、48V、12Vシステムの複雑な課題が解決できるようになると同社では説明している。例えば、必要な電力が大きいアクティブサスペンションシステムに対して、双方向BCM6135を用いて高電圧バッテリーから48Vへ降圧することで高いパフォーマンスを効率よく実現できるようになるとしているほか、DCM3735をBCM6135と組み合わせて使うことで、BCM6135の48V出力を安定化した12V電源に変換。これにより、DCM3735を離れた位置に配置して、車両ゾーンにローカル12V電源を作ることが可能だという。
なお、これらの電源モジュールはフレキシブルに使うことができるため、多くの自動車アプリケーションに電力を供給することができるようになるとするほか、重要なのは、48V化の対応ができることとしており、高電圧トラクションバッテリーを48Vに変換する場合でも、48Vバスから負荷点に電力を供給する場合でも、従来の12Vサブシステムを新しい48Vゾーンアーキテクチャで動かす場合でも、これらの電源モジュールを使うことで、電力損失を低減しながら、最高クラスの電力密度の実現が容易に設計できるようになるとしている。