千葉工業大学(千葉工大)は9月25日、同大学が宇宙産業向けの人材育成を目指してスタートした高度技術者育成プログラムの一環として実施し、同大学の学生たちが開発した1Uサイズのキューブサット(超小型衛星)「SAKURA」が8月29日に国際宇宙ステーション(ISS)から軌道に投入され、無事初期ミッションを達成したことを発表した。
同成果は、千葉工大 惑星探査研究センター(PERC)のチョウ・メンウ主席研究員(同・大学 工学部 機械電子創成工学科 教授兼任)」らの研究チームによるもの。
世界の宇宙産業はここ数年で数倍に拡大しており、日本でも旧来の宇宙企業に留まらず、多くのベンチャー企業が宇宙ビジネスアイデアを提案し、企業活動を進めている。しかし、大きな課題もあるという。それは、新たなビジネスアイデアを具体化するために必須の存在である、高品質な人工衛星などの設計・製造・運用を支える高度な知識やスキルを有した技術者が不足しているという点。
そうした中で千葉工大は、社会ニーズの解決のための宇宙を使ったソリューションを確実に実現できる衛星開発を行える技術者を育成するために、2021年4月より「高度技術者育成プログラム」を実施しているという。これまで、同プログラムでは超小型衛星の2号機「KASHIWA」が衛星軌道に投入されており(2024年4月にISSから放出)、同年6月には初期ミッションが達成された。
今回軌道に投入された「SAKURA」は、高度技術者育成プログラムで開発された3号機となる超小型衛星で、一辺が10cmx10cmx10cmの1Uキューブサット。2022年7月に当時の学部2年生によって開発が始まり、製造に1年2か月をかけた後、2024年4月にJAXAに引き渡され、日本時間2024年8月5日に、スペースXのファルコン9ロケットNG-21号機で打ち上げられてISSに無事届けられた。そして、同月29日に放出されて地上と衛星間の通信が確立され、2024年9月18日、人工衛星局相当アマチュア局免許が交付されたという。衛星基本機能の宇宙空間での動作確認が行われ、「SAKURA」で計画されていた初期ミッションが達成されたとした。
まず、ミニマムサクセスレベル(最低成功条件)は、搭載されている2つのカメラのうちの地球撮影用の「Earth CAM」を用いて「衛星が撮影した画像1枚を地球上で画像に復元する」ことだがこれをクリアし、次に、アマチュア無線局がアマチュア無線電波上に生データをリアルタイムに配信するパケット通信プロトコルである「APRS(Automatic Position Reporting System)」による一般アマチュア無線家へのメッセージが送信された。これらの初期ミッションは放出してから2日後には達成され、完成度の高い仕上がりを示すことができたとする。
今後、数か月の間、APRSによる一般アマチュア無線家へのメッセージ双方向通信、太陽撮影用カメラ「Sun CAM」による太陽観測、Earth CAMを用いた火山・洪水・台風を対象とした地球観測に挑戦すると同時に、SNSやWebサイトを通じて「SAKURA」が取得したデータを公開していく予定としている。
また千葉工大では、今回の「SAKURA」に続き、もう間もなく(2024年秋)には、高度技術者育成プログラムの1号機(1号機だが開発に時間がかかったため、JAXAへの引き渡しは2024年6月となった)の「YOMOGI」の打ち上げも予定されている。