TSMCは、2025年より開始する新竹科学園区(新竹サイエンスパーク)にある宝山工場(Fab20)での2nmプロセスの量産開始に先立つ形で、9月から同社のLSI試作・検証サービス「TSMCサイバーシャトル」において、2nmプロセスによる製造受託の受け付けを開始する模様であると台湾の経済メディアある工商時報が報じている

  • 2nmプロセスの量産が行われるTSMC Fab20(新竹宝山工場)の4つの製造棟(Phase1~4)の完成予想図 (出所:TSMC)A@2nmプロセスの量産が行われるTSMC Fab20(新竹宝山工場)の4つの製造棟(Phase1~4)の完成予想図

TSMCサイバーシャトルは、マルチプロジェクトウェハ(MPW)を使った試作サービスのことで、複数の顧客のチップを同じ300mmウェハ上に配置し、フォトマスクなどのコストを各社で分担する形で、短期間かつ低コストで試作・検証できるサービス。TSMCは例年、3月と9月にサイバーシャトルサービスを受け付けており、プロトタイプのコストを90%削減できるとうたっている。

試算では、TSMCの3nmプロセスの受託生産価格はウェハ1枚当たり2万ドル、2nmになると2万4000~2万5000ドルとされており、製造を委託するIC設計会社にとって大きな負担となる。プロセスの微細化が進めば進むほど、フォトマスクの製造を含めたコストが高騰し、プロトタイプの設計や検証にも時間と費用がかかるため、サイバーシャトルサービスでコストを低減したいIC設計会社は多いとされる。また、3nmプロセスではFinFETを採用していたが、2nmプロセスではシリコンナノシート(GAA)技術を採用するなど、大きな技術的変更が生じるため、サイバーシャトルを使って実際に回路の動作検証したいと希望する企業が特に多いという。

TSMCの2nmプロセスの量産準備は順調に進行していると言われており、Appleが2025年に2nmプロセスを用いた生産委託の最初の顧客となる見込みで、同年発売と見られるiPhone 17シリーズ(仮)がその最初の搭載製品となるとみられている。2nmプロセス(N2)の派生である「N2P」ならびに次世代プロセスとなる「A16」は2026年後半の量産開始が計画されており、プロセスの微細化に伴う消費電力の低減とトランジスタ密度の増加は継続していくものと思われる。