ベルギーimecは、米国ユタ州で8月上旬に開催されたSmall Satellite Conference 2024において、宇宙用途に対応する新しいハイパースペクトルセンサを発表した。
このハイパースペクトルセンサには、ライン状のフィルターがオンチップで搭載されており、450nm~900nmの広いスペクトル範囲と均一かつ高い光感度を特徴としており、最適化されたプロセス技術の適用によるセンサ間のバラつき抑制も含め、小型衛星による地球観測に対する厳しい信号対雑音比(SNR)要件を満たすことを可能としているという。そのため、imecではこのハイパースペクトルセンサを活用することで、食品・農業、生物多様性、水質や大気の質、鉱業の監視など、宇宙からのさまざまなマルチスペクトルおよびハイパースペクトル画像化アプリケーションで高品質画像の取得を可能とすると説明している。
宇宙からのマルチ・ハイパースペクトル画像撮影用の次世代センサ (出所:imec)
衛星を活用した地球観測の用途は急速に拡大しており、さらなる高精度データの取得に向けた高性能センサの実現が求められるようになっている。そうしたニーズに不可欠な要件としては、広いスペクトル範囲で高い感度を維持することであり、その実現のために今回の研究では、すでに宇宙用途で実績のあるams OSRAMの「CMV2000センサ」に特殊な薄膜スペクトルフィルターをモノリシックに統合することを実施。同センサは、2/3インチ光学フォーマットで2048×1088ピクセルの解像度を提供するほか、フル解像度で最大340fps@10ビット/ピクセルで動作することが可能。センサ上で複数の関心領域(ROI)を定義できるため、さまざまな種類のミッションに対応できる柔軟性を有しており、フルスペクトル解像度での動作に加え、特定のバンドを選択することもでき、用途に応じた使い分けが可能となっている。
また、96バンドに対応し、そのスペクトル範囲は450~900nm。第1世代品と比較して、スペクトル範囲全体にわたってフィルタ透過効率がより均一になっているほか、バンドごとに10のデジタルTDI(時間遅延積分)ステージを実現している。この検出器のTDI機能は前世代比で2倍となっており、これにより全波長範囲にわたって最大のSNRを提供することが可能となったという。また、製造プロセスの最適化による、センサ間のバラつき抑制もあり、正確な分析と処理時間の短縮を実現したとimecでは説明している。
今回の薄膜フィルタをCMV2000にモノリシックに統合する手法は、堅牢かつ安定した構成であるとimecでは説明しており、レンズとセンサの間に個別の光学要素を配置するほかの構成手法とは異なり、統合設計によるフィルターと検出器の高い位置合わせ精度が保証されるほか、衝撃、振動、温度変動にも耐性が得られ、宇宙という過酷な条件での継続動作に大きな利点をもたらすとしている。
なお、同センサはimecより1個から入手することが可能で、大量供給の契約も締結できる体制が整っているとのことで、実際のイメージセンサ技術の詳細や応用分野のイメージについての説明を行う専用のWebサイトも立ち上げ済みであるという。