Infineon Technologiesが、中Innoscience(Zhuhai)Technologyおよび米国子会社などを相手取り、Infineonの米国特許9,899,481号を無断使用しているとして2024年3月14日にカリフォルニア州北部地区地方裁判所に訴訟を起こしていたが、今回、係争中の訴訟を拡大し、GaN関連特許3件(米国特許第8,686,562号、第9,070,755号、第8,264,003号)の侵害申し立てを追加したことが判明したと米国の半導体専門メディア「Semiconductor Today」が報じている

さらにInfineonは、訴訟の対象となっている同じ4件の特許に関する法的請求を含む訴状を米国国際貿易委員会(USITC)にも提出。米国特許の侵害に対する恒久的差し止め命令と損害賠償を求めているとも報じられている。

請求の範囲は、同社独自のGaNパワートランジスタの性能と信頼性を実現する革新技術を網羅するGaNパワー半導体の中核をカバーしたもの。同社のGaN特許ポートフォリオは、約350件の特許ファミリーで構成されており、Si、SiC、GaNのパワートランジスタと補完的なドライバおよびコントローラのポートフォリオには買収したGaN Systemsのものも含まれているという。

法廷措置の強化背景にはNVIDIAの影響か?

Infineonが法的措置の強化拡大の背景にはNVIDIAのデータセンタ向けサーバモジュールにInnoscienceのGaNコンポーネントが搭載されているためだとする業界の情報筋のコメントを台DigiTimesが報じている

NVIDIA自身はモジュール内の小型パワー半導体サプライヤについては特に気にしておらず、モジュール全体のパフォーマンスと部品表(BOM)コストで判断しているというが、これを踏まえ、Infineonの一連のGaN特許侵害訴訟の主な理由として、そうした大手企業に対し、普段はあまり気にしない小さな部品であっても特許を侵害していることに対する注意喚起と、それによる訴訟回避への警告、ならびに中国の顧客が生産するモジュールを通じた間接的な海外販売を含め、Inoscienceの海外進出の効果的な阻止の2つにあると分析する関係者もいる。

2003年には米Efficient Power Conversion(EPC)がInnoscienceに対してGaN特許侵害訴訟を起こしており、Innoscience側が対抗して出した再審査要求の判断が11月に米国で下される見込みである。

Infineonの特許ポートフォリオの強さ

Infineonが買収を含め蓄積したきたGaN特許は、世界でもっとも包括的なものとみなされており、業界分析によると、今回のような動きが世界的なGaNの特許紛争に影響を及ぼす可能性があるという。特許紛争はしばしばその出所にまで遡るが、同社がオリジナルのp-GaN特許を保有しているためで、多くのGaN企業が同社に特許料を支払う必要が生じることが予想される。そのため、InnoscienceもInfineonの特許の有効性に異議を唱える可能性は低いといえる。

GaN技術は現在、さまざまな中電圧アプリケーションへと拡大しており、中国市場でもそれは同様である。その中国は、半導体の自給自足を推進しており、それを受けた中国企業が競争力のある生産を行える市場から外国企業が徐々に撤退していくことが予想されるが、こうした市場変化は、GaN特許紛争が生じる前から外国企業は予想していたものと思われる。