ジャパンディスプレイ(JDI)は8月2日、見る方向によって異なる2つの映像を同時に表示することを可能とする技術「2 Vision Display(2VD)」を開発し、車載用途で求められる画質に対応するディスプレイを公開した。すでに自動車向けディスプレイとしての導入が検討されており、2025年度から量産が始まる予定だとしている。
「2 Vision Display」とは?
2VDとは、1つのディスプレイ上で、見る角度によって異なる2つの映像を表示することができる技術。例えば、自動車であれば1つのディスプレイで、運転席側から見ると、ナビゲーションや安全運転をサポートする情報が表示されているのが見えるが、助手席側から見ると同乗者の趣味嗜好に合わせた映像が見えるというものとなる。しかも、今回の注力点である画質の向上により、2つの画像が混ざることなくどちらの方向からみてもそれぞれの映像がキレイにみえるようになっている。
1つのディスプレイで2つの映像を映し出すという技術そのものはこれまでにも存在していたが、画質が粗く実用的ではなかったという。今回、同社は画質の向上のために、自社で手掛けるLTPS(低温poly-Si)と液晶パネルの光学技術を活用する形で、この課題を解決した。
また、ディスプレイサイズを大きくしたくても、エアバックを取り付けなければならないなど車内インテリアにはさまざまな制約があり、従来、縦方向の大きさには制限があったという。しかし、2VDにすることで、制約を減らす形でディスプレイを設置することが可能となり、シンプルかつ洗練された車室内のデザインにすることができるとした。
さらに、通常のディスププレイより2VD対応ディスプレイの方が高価ではあるものの、2枚のディスプレイを取り付けるよりはコストも抑えることが出来るとする。
また今回発表されたディスプレイには、新開発のアルゴリズムを組み込むことで、運転席側と助手席側のどちらからタッチ操作したかを識別する機能である「Dual Touch」も搭載。2VD技術と組み合わせることによって、誤作動の心配なく、安全かつ快適に、1枚のディスプレイを2枚の別々のタッチ機能付きディスプレイのように利用することができるとする。
JDIが志向する2VDの販売戦略
JDIは、この技術をまずは自動車向けに導入を検討しているとするが、今後は、例えば空港などで、近距離からみるとフライトの時刻表、遠距離からみるとディスプレイ広告にみえるなどの活用も検討しているとする。この際の距離の設定は変更可能だという。
JDIの代表執行役会長 CEOのスコット・キャロン氏は、「現時点ではヨーロッパや中国の自動車会社との商談が進んでおり、ある自動車メーカーでは、主軸機能として採用が決定している」と述べ、同社の目標として、2030年までに1000億円の市場規模を目指すとした。
これに対しキャロン氏は「1000億円としているが、私自身は1兆円単位、もしかしたらそれ以上の価値があると思っている」と製品に対して自信をみせていた。
生産工場としては、前工程は千葉県茂原市にある茂原工場か、石川県能美郡にある石川工場のどちらかで行い、後工程については中国工場になるだろうとしてはいるものの、今後変更があるかもしれないとのこと。しかし、同製品のために設備を新たに建設することはないとしている。
2VDは2画面だが、画面の解像度が多少落ちても問題ない場合、3画面、4画面と表示画面数を増やすことは可能だともしており、顧客の要望に合わせてそうしたモデルも開発できるとしている。活用の幅が広がればさまざまな場面で2VDの技術が活躍する日もそう遠くないかもしれない。