化合物半導体で高付加価値を提供してきたQorvo

Qorvo(クォルボ)は7月31日、都内で自社の現状と今後の戦略などに関する説明会を開催。日本市場について、売上高を3年以内に2倍にすることを目指すとした。

同社は、TriQuint SemiconductorとRF Micro Devicesの合併によって2014年に誕生した化合物半導体を中心とするアナログ半導体メーカー。化合物半導体の付加価値を発揮できる高性能RF製品や高効率パワー半導体などを中心にビジネスを展開してきており、自社所有の前工程工場でそうした化合物半導体の製造を行っているほか、買収によって増えてきたSiのCMOSプロセス採用製品を中心にファウンドリを活用する形で事業を拡大させてきており、2024年度(2024年3月期末)の売上高は380億ドル、製品の年間出荷個数は80億ユニットを超す規模まで成長してきたという。

  • Qorvoの事業概要

    Qorvoの事業概要 (資料提供:Qorvo)

同社が7月30日(米国時間)に発表した2025年度第1四半期(2024年4-6月)の業績は、売上高が前年同期比36.2%増の8億8670万ドル、純利益はGAAPベースで前年同期の4360万ドルの損失から40万ドルの利益へと益転を果たしている。事業部門は、主に携帯電話関連を主軸とするAdvanced Cellular Group(ACG)、防衛・航空宇宙やインフラ、産業分野などを軸とするHigh Performance Analog(HPA)、自動車などを軸とするConnectivity & Sensors Group(CSG)の3つに大きく大別されるが、最大の部門はACGとなる。その同四半期の売上高は同55.8%増の6億4230万ドル、HPAが同7.3%減の1億2950万ドル、CSGが同15.7%増の1億1490万ドルとなっている。

近年の同社の事業の牽引役が、このACG部門で、モバイル機器のRF製品を中心に、スマートフォン(スマホ)やモバイル機器の開発に際して、メーカーのニーズに対応できるフロントエンド製品や高効率電源製品を提供することで、事業成長を果たしてきたという。

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    Qorvoの事業セグメント概要。複数にまたがっているアプリケーション分野があるが、メインとサブといった関係性で、自動車は2024年7月時点ではCSGがメインだという (出所:2024年6月開催のQorvo Investor Day資料)

Qorvo JapanのJapan Country Managerを務める大久保喜司氏は、自社の強みを発揮できる領域として、「コネクティビティ」「電源」「モビリティ」「AI/データフィケーション」の4つを挙げており、それらすべてがスマホには含まれており、スマホ分野で培われた技術を、自動車などのほかの分野に展開することを目指していると説明する。

  • Qorvoの事業成長を支える4つのメガトレンド

    Qorvoの事業成長を支える4つのメガトレンド (資料提供:Qorvo)

  • あらゆる技術が詰め込まれているといっても過言ではないスマホ

    あらゆる技術が詰め込まれているといっても過言ではないスマホ。Qorvoの製品も数多く採用されている (資料提供:Qorvo)

急速に市場の獲得が進む自動車分野

そのため自動車分野の売り上げは急速に伸びているという。自動車のエレクトロニクス化が進み、車内外で無線ネットワークの活用が進みつつあることが背景にあり、例えばRFのフロントエンドの専門知識を活かして、車内におけるセルラーネットワークやWi-Fiへの接続や、搭乗者や車体状況の把握などへの活用が進められつつあり、そうした子供の置き去り検知などの法整備が進む分野を含め、UWB関連が特に注目を集めるようになっているとしている。

  • エレクトロニクス化が進む自動車

    安心・安全そしてCO2排出削減のためにエレクトロニクス化が進む自動車。そこでも多くのQorvo製品が採用されるようになってきたという (資料提供:Qorvo)

また、電気自動車の電費向上や充電効率の向上などのニーズに対応することを目的としたSiC FETについても、UnitedSiCの買収により獲得。日本でもオンボードチャージャなどでの採用が進みつつあるとするほか、MEMSを活用したタッチセンサも車内のインテリアやエクステリアなどのメカニカルスイッチの置き換えなどで採用が進みつつあるとする。

日本では自動車に加え、防衛・宇宙航空分野での成長に期待

同社が日本での注力分野と位置付けるのは、強いメーカーが複数社存在する自動車はもとより、近年の地政学的リスクの高まりなどを踏まえて注目を集めるようになってきた防衛および宇宙航空分野だという。

防衛関係として同社が期待しているのが2024年3月に買収を完了したAnokiwaveのアクティブ・フェーズドアレイ・アンテナ向けミリ波用シリコンICで、すでに日本の顧客からも引き合いをもらっているという。

  • 防衛・航空宇宙分野のトレンド

    防衛・航空宇宙分野のトレンド。省スペースかつ高効率・高性能といった技術が求められるため、シリコン半導体よりも高い性能を出せる化合物半導体にとっては強みを出せる市場となる (資料提供:Qorvo)

大久保氏は、「グローバルで2024年度をベースに3年以内に売り上げを倍にするという目標を掲げており、日本でもそれは同じ。その実現のために、新たに手に入れた製品なども含め、2億ドルを超す規模のシステムに対してアプローチを図っている。車載や防衛分野が多いので、実際に採用されるまでには年数がある程度必要だが、それらの案件を獲得できれば、確実にシェアを伸ばしていくことができる」と、自社の強みをアピールすることで、売り上げの拡大を目指すとする。

  • 日本法人Qorvo Japanの概要

    日本法人Qorvo Japanの概要。SAWフィルターのデザインセンターを大阪に有しており、そこで開発されたSAWフィルタが同社のRFの送受信機能を一体化したモジュールである「PAMiD」に活用されるなど、重要な役割をになっているという

また、その顧客に向けたアプローチとしても、単にハードウェアを提供するのみならず、ソリューションレベルでのソフトウェアも提供するなど、新たな付加価値の提供も進めていくとする。

  • 日本市場における今後の有望市場
  • 日本市場における今後の有望市場
  • 日本市場における今後の有望市場と、それらに対する成長戦略 (資料提供:Qorvo)

なお、大久保氏は、「日本という地域性も考慮し、チャネルパートナーも含めて、成功に向けて一緒に歩んでいきたい」と、顧客のプロジェクトの成功に向けて、自社のみならずパートナーと協力して事業を展開していくことが日本市場での成長の鍵になることを強調していた。

  • Qorvo JapanのJapan Country Managerを務める大久保喜司氏

    Qorvo JapanのJapan Country Managerを務める大久保喜司氏。2021年1月より現職。同社入社以前はルネサス エレクトロニクスやIntersil、Silicon Labsなどで要職を歴任されてきた