脱炭素社会実現に向けた動きは世界的に加速しており、日本でも多くの企業が取り組みを進めている。脱炭素化を単なる環境問題対策としてだけではなく、経済成長の機会と捉え、社会全体の変革につなげようというのが、いわゆるGX(グリーントランスフォーメーション)だ。
長期的な成長を目指すのであれば、GXを経営戦略に取り入れたGX経営の実践は全ての企業が一度は検討すべきだろう。だが、環境への影響が大きい大企業に比べ、中小企業ではまだ動き出せていないところも多いようだ。では、中小企業はどのようにGX経営に向き合うべきなのか。フォーバル GDXリサーチ研究所 所長の平良学氏にお話を伺った。
GX経営をしない中小企業は今後どうなる?
――大企業だけでなく、中小企業もGX経営を推進すべき理由を教えてください。
平良氏: 2020年、当時の首相だった菅義偉氏が、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロとする「2050年カーボンニュートラル」を宣言しました。さらに、菅政権下では成長分野の1つとして、グリーン・イノベーションが掲げられ、岸田政権下でも、その流れが継続しています。大企業は新しいルールをいち早く理解し、対応することで新たなマーケットでスタートダッシュを切っていきます。この流れは中小企業も同様です。企業は“変化対応業”であり、マーケットの変化にアジャストする必要があります。
――とはいえ、中小企業のGX経営が進んでいるかというと、そうではないようです。
平良氏:弊所が中小企業1,619社(調査期間:2023年1月10日~2月10日)を対象に行った調査では、中小企業で「DXに取り組んでいる」と答えた企業は半数以上だったのに対し、 「GXに取り組んでいる」と答えた企業は23%でした。その要因としては、自社にリソースがない、リソースに対する投資対効果を考えると費用捻出ができない、経営者に寄り添い伴走してくれる人や組織がいないといったことが考えられます。このような状況は、DXの必要性が叫ばれ始めたときと同じです。
――中小企業がGX経営に取り組まない場合、どのようなことが起こるのでしょうか。
平良氏:現在、多くの大企業はESG経営の観点から、サプライチェーンで排出される二酸化炭素を含む温室効果ガス(以降、温室効果ガス)の削減に3つのスコープで取り組んでいます。スコープ1は企業などが直接排出した温室効果ガス、スコープ2は間接的に排出した温室効果ガスであり、スコープ3はバリューチェーン全体から排出された温室効果ガスが対象です。