ヌヴォトン テクノロジージャパン(NTCJ)は7月1日、ToFセンサに距離演算回路とISP(Image Signal Processor)を集積した1/4型VGA(640×480画素)解像度の3D ToFセンサ「KW33000A1T/KW33000A1K/KW33000ARA」の量産を開始したことを発表した。

従来、3D ToFセンサは、後段のアプリケーションプロセッサやシステムプロセッサに撮像信号を送信し、画像としての処理を行う必要があり、撮像から出力までに1フレーム以上の遅延が少なくとも発生していた。同製品は、ToFセンサの画素エリア(アレイ)の周辺に距離演算回路とISPを搭載することで、後段のプロセッサでの距離演算を不要とし、かつ最大120fps(QVGA時)という高速で3D画像の出力を可能としたもの。併せてセンサから3Dの距離画像と3DのIR画像を同時に出力することで、2種類の画像を用いて、より高い認識精度を必要とする用途にも適用可能とした。

  • 「KW33000A1T/KW33000A1K/KW33000ARA」の外観
  • 「KW33000A1T/KW33000A1K/KW33000ARA」の外観
  • 「KW33000A1T/KW33000A1K/KW33000ARA」の外観と回路イメージ。中央の画素アレイの周辺部分に距離演算回路とISPが搭載されている (資料提供:ヌヴォトン、以下すべて同様)

また、画素サイズ5.6μmとしながらも、フォトダイオードの電荷を読み込むメモリノードを独自のCCDメモリ技術を活用することで、従来の「基準光信号」「近距離光信号」「背景光信号」の3信号から「遠距離光信号」を加えた4信号としたほか、メモリ内に混入した太陽光などの外乱光ノイズを除去する技術により、太陽光の下でも従来比約3倍となる最大20mの測距を可能としたとする。

  • 独自のCCDメモリ技術を活用

    独自のCCDメモリ技術を活用することで5.6μm角の画素に4つのメモリエリアを組み合わせることに成功。4種類の撮像信号を活用することで、外乱光ノイズの除去効率を高めることを可能とした

さらに、この4種類の信号を4個のメモリと組み合わせることで1フレーム内で同時に取得することを可能とし、即座に距離演算を行うことで、動く被写体であっても動きにぶれを生じさせることなく、正確な測距を実現。この特長により、自律移動ロボットの障害物検知や、車のエアバッグ強度制御など、動作変化の多いアプリケーションであっても検知・認識を行うことができるとしている。

  • 各信号を同時にメモリに蓄える

    各信号を同時にメモリに蓄えることで、1フレームで距離画像の出力を可能とした

加えて、車載用途にも対応できるようにセンサ内に網羅的に独自の安全機構を搭載。これにより、センシング機能に影響のある故障を後段システムのプロセッサに瞬時に通知することができるようになり、センシングシステムを安全な状態へリアルタイムに移行させることができるとしているほか、すでにASIL-Bの第三者機関アセスメントを取得済みとしており、安全な車載センシングシステムの早期立ち上げが可能だともしている。

  • 車載用途にも適用するために故障検出回路も搭載

    車載用途にも適用するために故障検出回路も搭載

なお、3製品の違いは、KW33000A1Tが車載パッケージ品、KW33000A1Kが産業パッケージ品、KW33000ARAがチップ品となっており、いずれも光学サイズ、画素数、画素サイズ、フレームレート、対応電圧、インタフェース(MIPI、I2C/SPI)は同じ仕様となっている。

  • 3製品の仕様

    3製品の仕様

また、すでにリファレンス回路やソフトウェア開発キット(SDK)、システム側プロセッサの検知/認識用サンプルソフトウェアなども同社では用意済みとしており、ユーザー側でのセンシングシステムの検討や開発の効率化を容易に進めることが可能だともしている。

  • リファレンス回路やSDKもすでに用意

    リファレンス回路やSDKもすでに用意