日本電信電話(以下、NTT)は6月12日、IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想のAPN(All-Photonics Network)を活用して、複数のデータセンターに分散配置された計算処理環境においても秘密計算によるAI分析を実用的な時間で達成できることを実証したと発表。

これにより、遠隔地にあるデータセンターに配置された秘密計算サーバをIOWN APNで接続し、安全にデータ活用できるプラットフォームが期待できるとのことだ。

  • 秘密計算システム

    秘密計算システム

実証の概要

同社はより広域や複数組織間でのセキュアなデータ利活用を目指して、NTT西日本が構築したIOWN APNによる分散データセンターに、分散配置されたサーバによる秘密計算システムを構築した。

計算処理を行う際のネットワークの影響について評価するため、IOWN APNで接続している場合の構成と、一般的なネットワーク接続を模擬した構成、単一のデータセンター内の構成について、計算処理性能をそれぞれ測定して比較した。

測定の結果、10万件のダミーデータセットを学習対象としたAIモデルの学習処理において、GBDT(Gradient Boosting Decision Tree:勾配ブースティング決定木)およびFFNN(Feedforward Neural Network:順伝播型ニューラルネットワーク)に対して有意な差が見られたという。

特にFFNNにおいては、一般的なネットワーク接続が約157分である一方、IOWN APNの場合には約22分とおよそ7分の1の時間で学習が完了した。同一データセンター内で実施した場合のネットワーク接続は約15分の時間を要するが、地理分散した場合でも同一データセンター内と比較しておよそ1.5倍程度の時間となり、実用的な時間で処理可能であるとのことだ。

この結果から、従来は通信速度および遅延の関係から同一データセンター内に限定していた秘密計算システムを、一定距離にあるデータセンター間を接続しても構成可能であることが確認された。異なるデータセンターや企業間におけるシステムを用いたセキュアなデータ利活用システムへの応用が期待できる。

  • 実験構成概要

    実験構成概要