NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)は5月24日、増加するデータセンターへの需要に対応し持続可能な社会の実現に寄与するインフラについて、同社グループのソリューションを交えながらメディア向けに紹介した。

高まり続けるITインフラ、データセンターへの需要

クラウドの利用拡大やAIの高性能化、特に最近は生成AIの一般化などを背景として、通信トラフィックおよびデータトラフィックは増加している。今後についても、通信のシームレス化やAIなどによる自律型通信の増加が予想される。これに伴い、データセンター間の通信量も増大している。

また、昨今はAIへの投資額も増加しており、NTT Comは生成AIの利用がデータトラフィックの急速な増加をけん引すると予想している。これに耐え得る通信や処理が可能な基盤の整備が急務となっているそうだ。

  • ネットワークの需要が高まっている

    ネットワークの需要が高まっている

データセンターにおいては、電力消費についても頭の痛い課題だ。AIを中心にCPUおよびGPUの利用が増加し、データセンターにおける消費電力もこれに比例して増加している。CPU/GPUそのものの省電力化はもちろんのこと、データセンター内の冷却や電源システムについても消費電力量を改善する余地がある。

一方で、市場はESG(Environment:環境、Social:社会、Governance:ガバナンスの頭文字を取ったもの)への対応も求めている。特に機関投資家は投資の判断にESGへの取り組みを重視するようになっており、企業はESGへの対応も迫られる。対応が後手になれば、企業価値や市場優位性を失う可能性すらあるという。

  • ESGへの投資額も増加している

    ESGへの投資額も増加している

NTTグループが開発を進めるIOWN構想

NTTグループが開発を進めるIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)では、同社の強みである光技術を活用して、ネットワークや情報処理基盤の高度化を図る。今後のIOWN構想のロードマップは大きく4つのフェーズに大別される。

NTTはIOWN 1.0の商用サービスとして、従来の200分の1のネットワーク遅延を実現するエンド・ツー・エンドの光サービスを提供開始。NTT Comは3月に都道府県間をまたぐ通信サービス「APN(All-Photonics Network:オールフォトニクス・ネットワーク)専用線プラン」の提供を開始している。

2025年以降にはIOWN 2.0として、ボード接続用のデバイスを光化して電力効率を従来の13倍まで増加する。また、IOWN 3.0は6G世代の新たなインフラ需要に対応するため、チップ間を光化し125倍の大容量転送を実現する予定だ。また、その次のIOWN 4.0に相当するフェーズではチップ内まで光化し、さらなる電力効率の向上を目指す。

  • IOWN APNデバイスのロードマップ

    IOWN APNデバイスのロードマップ

省エネデータセンター「Green Nexcenter」とIOWNにより実現するユースケース

NTT Comは2023年10月、直接液冷(Direct Liquid Cooling)方式のサーバ機器に対応し省エネ型の冷却環境を実現するデータセンターサービス「Green Nexcenter」の提供開始を発表した。1ラック当たり最大で80キロワットの冷却が可能で、PUE(Power Usage Effectiveness:電力使用効率)は1.15と、従来型の空冷データセンターと比較して消費電力を30%ほど削減している。

この省エネ指向のデータセンターと、大容量かつ低遅延で低消費電力なIOWN技術を組み合わせることで、新たなビジネス機会の創出やレジリエンスの向上を市場にもたらすという。主なユースケースとして、以下の3つが紹介された。

最新GPUを活用した業務ポテンシャルの最大化

製品設計においては、高精度かつ迅速な業務運営が重要だ。そこで、GPUを活用したEDA(Electronic Design Automation)や創薬研究などが求められるが、高発熱なサーバに対応する環境をオンプレミスで構築するのは難しい。

こうした課題に対し、Green NexcenterにGPUを配置して自社との間をIOWN APNで接続することで、大容量のデータ転送が低遅延で可能になるため、あたかもオンプレミスかのようにGPUを利用できるようになる。

  • 想定ユースケース1

    想定ユースケース1

ビジネス基盤の強靭化と事業継続性の向上

IOWN APNによる高速・大容量の通信は、分散型のデータセンターにも貢献する。遠隔医療や自動運転など高速なレスポンスが求められる用途においても、IOWN APNによってこれまでよりも物理的に遠方のデータセンターが利用可能となるため、サービスを提供できる範囲が広がるという。

例えば、従来回線では1ミリ秒以下の遅延を実現するために30キロメートル以内のデータセンターのみを接続しているような場合に対して、IOWN APNにより拠点間の遅延値を最小限に抑えることで、より遠方のデータセンターを利用できるようになる。

  • 想定ユースケース2

    想定ユースケース2

企業の社会的責任の履行による社会的価値の向上

NTT Comが提供するGreen Nexcenterでは、液冷方式をはじめとする効率的な冷却方式に加えて、実質再生可能エネルギーを100%導入している。二酸化炭素排出量を実質ゼロにすることで、企業のゼロカーボン達成およびサステナビリティ経営に貢献するとのことだ。

  • 想定ユースケース3

    想定ユースケース3