ホンダがEVとソフトに巨額投資 トヨタを凌ぐ10兆円の投資

ホンダが電動化でアクセルを踏む。社長の三部敏宏氏は「EV(電気自動車)の普及についてはバラつきがあることは想定していた。しかし、30年までにEVを200万台生産できるビジネス環境を整えていかなければならない」と強調する。

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 同社はEVの拡大と自動運転などのソフトウエア開発を強化するため、30年度までの10年間に10兆円を投資する。当初の5兆円を倍増させた。「ホンダの40年に新車の全てをEVと燃料電池車にするという目標への強い意志を感じる」と他社幹部は指摘する。

 巨額投資に至る骨子は、いかにEVでも稼げる体制づくりができるかだ。そのためホンダは次世代EV「0(ゼロ)シリーズ」を世界で7モデル投入するほか、電池を中心に「垂直統合型」のバリューチェーンを構築して競争力を高める考え。

 10兆円投資の内訳はソフトウエア定義車両の開発に2兆円、包括的バリューチェーン構築に2兆円、EV専用工場や新車種投資に6兆円だ。特にソフトウエアには「2年前の(5兆円という)金額では到底足りない」(同)といった認識を持つ。

 ホンダでは、EVの本格普及期を迎えるのは30年度と見ているようだ。それまでに強固な事業基盤を築いておきたいという考えで、生産面では米オハイオ州の完成車工場に設置する電池ケース製造ラインに6000トン級の「メガキャスト」を導入し、生産効率を向上させる。メガキャストは複雑な形状の部品を一体成型する鋳造技術で、数十~100点前後に及ぶ部品を一体成型できるため、製造工程や部品点数を大幅に減らせる。

 テスラが既に導入しており、トヨタ自動車も導入予定だが、これらは車体製造に活用する。一方のホンダの場合は電池製造の工程に導入し、30年に北米で調達する電池コストを現行比20%減らし、EV生産コストは同35%減を目指す。

 EVやソフトウエア開発では日産自動車とも協業に向けた検討を始めており、「グローバルで稼げる体質」(同)が求められる。販売台数ではトヨタの4割に過ぎないが、トヨタを上回る投資を表明した三部体制の本気度が試される。