米国政府は5月14日(米国時間)、中国製電気自動車(EV)に対して、現状の4倍となる100%の関税を課すこと、ならびに中国製半導体や太陽電池に従来の2倍の関税を課すことを発表した。このほかにもリチウムイオンバッテリーなどの戦略分野の製品に対して総額180億ドル分の関税引き上げを行うことも発表している。
米バイデン大統領は、今回の措置の背景として「中国の不公正な貿易慣行は、米国の企業と労働者を脅かしている。また、人為的に低価格の輸出品を世界市場に氾濫させている」と述べており、中国の不公平な貿易慣行とそれによって生じる被害に対抗し、米国の労働者と企業を保護することを目的に、不公正な取引慣行に対する制裁措置を定めた米国通商法第301条に基づいて、中国からの輸入品に対する関税引き上げを指示したとしている。
それぞれの関税率引き上げに対する米国政府の考え
これにより中国製半導体の関税率は2025年までに現状の25%から50%に引き上げられる。米国政府は「レガシー半導体に対する中国の政策は、市場シェアの拡大と急速な生産能力拡大につながり、市場主導型企業による投資を駆逐するリスクをもたらしている。今後3~5年間の特定のレガシー半導体製造のための新規生産能力のほぼ半分を中国が占めると予想される」と、コロナ禍における半導体不足を踏まえ、中国にレガシーチップの主導権を握られてしまうと米国の安全保障が脅かされることを強調している。
EVの関税率については、2024年中に25%から100%に引き上げられる。米国政府は「中国政府の広範な補助金と不公正な市場慣行が過剰生産のリスクにつながっており、中国のEV輸出は2022年から2023年にかけて70%増加した。これは他地域での生産的な投資を危険にさらすもので、今回の措置は米国の製造業者を中国の不公平な貿易慣行から守ることになる」と説明している。
太陽電池の関税率(モジュール含む)は、2024年中に25%から50%に引き上げられる。米国政府は「関税の引き上げは、価格を押し下げ、国外での太陽光発電容量の開発を阻害する中国の政策主導の過剰生産からの保護を目的としている。中国は不公平な慣行を利用して太陽光発電サプライチェーンの特定部分の80~90%以上を支配しており、その現状を維持しようとしている。結果、人為的に安価な太陽電池モジュールやパネルが市場に氾濫し、中国国外での太陽電池製造への投資が損なわれている」としている。
このほか、EV用リチウムイオンバッテリーの関税率は2024年中に7.5%から25%に、EV以外のリチウムイオンバッテリーも2026年に7.5%から25%に引き上げられる予定で、バッテリー部品も2024年中に7.5%から25%に引き上げられる予定である。また、天然黒鉛と永久磁石の関税率も2026年に25%へと引き上げられるほか、その他の特定の重要鉱物の関税率も2024年中に25%へと引き上げられる予定で、米国政府は「重要な鉱物の採掘と精製能力が中国に集中しているためサプライチェーンが脆弱になり、国家安全保障とクリーンエネルギーの目標が危険にさらされている」としている。バイデン大統領は米国における産業基盤の構築を進めており、先端電池や電池材料の国内生産能力拡大に向けた補助政策に200億ドル近くを投じてきた。
中国政府は対抗措置の実施を表明
なお、この米国政府による中国製品の関税率引き上げに対し、中国政府は強く批判する声明を出し、対抗措置を講じる表明をしたが、その具体的内容は、明らかにされていない。