日本AMDは4月4日、AMDのPresidentであるVictor Peng氏の来日に合わせて同社のAIテクノロジーの現状に関する説明会を都内で開催したので、その内容を簡単にご紹介したい。
まず挨拶に立ったJon Robottom氏(Photo01)がJapan Focusとして説明したのがこちら(Photo02)。
こう言ってはなんだが、以前はCPUとGPUをどうやって売るかに注力しており、取れる戦略に限りがあったのだが、Xilinxの買収後にラインナップが大きく広がり、本格的にソリューションを提供できる環境になった事がこのスライドからもうかがえる。
続いてVictor Peng氏(Photo03)よりもう少し細かい説明が行われた。
ちなみにPeng氏、Xilinx時代は日本をしばしば訪れていたものの、2021年はコロナ渦の最中ということもあってオンラインでの説明会に留まり、筆者が知る限りAMDによる買収後は日本でのイベントに参加した記憶がない。その意味では久々の来日ということになる。筆者自身もちゃんと顔を合わせたのは、2018年のXDF以来だった気がする(いやAMDのアメリカでのイベント、例えばこれの折に挨拶とかはしてるのだが……)。
さて、Peng氏の説明そのものは既にAMDが、例えばAdvancing AI Eventで公開した内容の繰り返しではあるのだが、幾つか違いがあったのでそれを拾ってゆくと、以下のような話が挙げられた。
- MI300XやMI300Aは、発表当初でもNVIDIAのH100を上回る性能を発揮していたが、その後最適化が進んだことにより更に性能向上が実現した(Photo04)としている。
- JR九州はTAI(Tokyo Artisan Intelligence)と共同で、Kria SOMを利用したAIベースの新幹線線路の点検ソリューションを構築(Photo05)。
- アイシンがZynq Ultrascale+を利用した次世代駐車支援(APA:Advanced Parking Assist)システムを構築(Photo06)。
- キヤノンがVersal AI Coreを利用して自由視点映像システムを構築(Photo07)
これは日本での説明ということで、日本での事例を集めたものである。最近で言えば、ソニーの車載向けLiDARのReference DesignにAMDのAdaptive Computing Solutionが採用された話とか、これは日本以外も含む話だがAMDのEmbedded+の発表など、今はAMDの組み込み向けソリューションが旧Xilinxのソリューションを中心に回り始めた感が強い。
そのあたりもあってか、質疑応答の中でIntelによるAlteraのスピンオフをどう考えているか? という質問に対して「他社の事は判らないが」と前置きしたうえで、IFS(Intel Foundry Services)の立ち上げのためにはまだまだ資金が必要であり、Alteraのスピンオフもこの一環だろうとし、「AMDとXilinxは1+1=2以上、3とかになっている」としたのは、Xilinxの買収がAMDのポートフォリオや顧客の充実に大きな効果を発揮したのみならず、もともとVersal AI Core/Edge用に開発されたAI Engineが、そのままRyzen AIのInference用Engineとして採用されるなど、Xilinxの技術がそのままAMDの製品に生かされる(逆もまたしかりであるが)形で相乗効果を発揮している事を指しているのだろう。言外には、折角Alteraを買収したにも関わらず、それをうまく行かせなかったIntelを揶揄する意味合いが含まれていたようにも感じられた。まぁ中の人が「1+1=1」と自嘲するIntelの買収戦略の拙さは今に始まった話ではなく(というか、既にカンパニーカルチャーと化している気すらする)、逆にATIとかXilinxなどを取り込んで、それをうまく生かして成長してきたAMDの強みが現在のAI戦略に上手く結びついている事が、Alteraのスピンオフで改めて示されたとしても良いだろう。
今回は顧客回りの合間を縫う形での開催ということであまり時間も取れなかった中での記者説明会ということもあり、慌ただしいものとなったが、逆に言えばトップExecutiveが慌ただしく顧客回りをしなければいけない程に日本におけるAMDのニーズが高まってきたというのは、これまでのCPU+GPUから新たにFPGAというかAdaptive SoCを獲得して、より広範なトータルソリューションを提供できるようになったことでマーケットが広がった事を示している様にも思える。今後の展開が楽しみである。