宇宙航空研究開発機構(JAXA)は3月4日、2023年9月7日に打ち上げられたX線分光撮像衛星「XRISM」が初期機能確認運用を終え、定常運用に移行したことを発表した。

すでに初期機能確認運用の段階にて、当初の目標を上回る分光性能など、優れた機器性能を軌道上で達成していることを確認しており、今後の定常運用段階では、搭載された観測機器の特長を活かす天体観測や、観測精度を高めるための較正・初期性能検証を最初に実施した後、世界中の研究者からの観測提案に基づいた天体観測を開始する予定だという。

これまでにXRISMでの観測としては、例えば軟X線分光装置「Resolve(リゾルブ)」にて地球から約2億4000万光年の距離に位置し、X線で明るく輝くペルセウス座銀河団の中心部のスペクトルを取得。取得した精細なX線スペクトルから、プラズマの温度や速度を精密に測定することで、宇宙の力学的進化を支配する暗黒物質の分布や動きがわかり、銀河団がどのようなプロセスで作られ、今後どのように進化するのかを明らかにできることが期待されるという。

  • XRISMが搭載する軟X線分光装置(Resolve)で取得されたペルセウス座銀河団のX線スペクトル

    XRISM搭載の軟X線分光装置(Resolve)で取得されたペルセウス座銀河団のX線スペクトル。背景は観測領域付近のX線・可視光・電波の合成画像で中央は銀河団の中心にある銀河NGC 1275。右上は6keV~7keVのスペクトル拡大図 (C)JAXA/NASA/CXC/IoA/A.Fabian et al./NRAO/VLA/G. Taylor/ESA/Hubble Heritage (STScI/AURA)/Univ. of Cambridge)

また、軟X線撮像装置「Xtend(エクステンド)」では、おおかみ座の方向、地球から約7000光年の距離に位置し、1006年に爆発した超新星残骸SN 1006のX線画像を取得。爆発から1000年ほどの時をかけて、直径65光年ほどの球状の天体へと成長し、現在も秒速5000kmの速さで膨張し続けています。また、その見かけ上の大きさは満月とほぼ同じで約30分角の視直径を持っているが、Xtendの広い視野により、撮影画像の中に天体を収めることに成功。このデータから、爆発の際の核融合反応によって作られた元素の量や、残骸が膨張する様子を詳しく調べることができるようになるという。

  • 超新星残骸SN 1006のX線と可視光の合成画像

    超新星残骸SN 1006のX線と可視光の合成画像。X線画像はXRISM搭載の軟X線撮像装置(Xtend)で取得 (C)X線:JAXA/可視光:DSS

なお、ファーストライト以降に得られた科学観測データの一部については、観測提案を検討する世界中の研究者が、XRISMの性能を正確に把握し、よりよい提案につなげてもらうことを目的に立ち上げられた研究者向けWebサイトにて公開されており、今後も観測成果などを随時更新していく予定だという。