TSMCが2024年1月の月間連結売上高を発表した。それによると、売上高は前月比22.4%増、前年同月比7.9%増の約2157億9000万NTドルとなったという。2023年11月ならびに12月は2か月連続で前月比、前年同月比ともにマイナス成長を記録したが、2024年に入ってから好転し、1月の売上高としては過去最高を記録したという。
データセンター向けを中心としたAI半導体の旺盛な需要がけん引した模様である。TSMCのC.C.Wei CEOは、2023年12月に開催された決算説明会にて、2024年の売上高を、前年比20%を超す規模との予測を発表している。同社関係者によると、1月の好調を背景に2024年第1四半期の売上高も第1四半期としての過去最高を更新すると見られるほか、年末に向けて四半期売上高も増加していくことが期待されるという。
Appleが先端プロセスでの発注を5割増か?
こうしたTSMCの好調を支える1社であるAppleが2024年、TSMCに対する3nmの改良版プロセスによる発注を5割増やす見込みとする台湾半導体関係者からの情報を、台湾の経済メディアである經濟日報が報じている。
それによるとAppleは、デバイスのAI性能を強化し、自社プロセッサの計算能力を向上させることを目的に、自社製品ラインアップのアップグレードを図ると見られており、次世代のPCならびにスマートフォン向けプロセッサとなるであろう「M4」および「A18」ではAIコアの数を大幅に増やすことが期待されるという。
また、別の經濟日報の記事では、Appleの発注数増に伴いTSMCの3nmの月産生産能力は2024年第1四半期の3万枚〜4万枚(300mmウェハ)から年末までに10万枚規模に増加する見込みだという。TSMCは通常、顧客からの需要がはっきりした場合にのみ生産拡大計画を開始する傾向がある。そのため、TSMCが生産拡大を決定したときは、すでに大量の当該プロセスの生産拡大に足るだけの注文を受けていることを示しており、同社が年末まで好調に事業を維持する可能性が高いともしている。
AppleはTSMCのパッケージング生産能力も確保?
Appleは、前工程での注文を増やすのと併せて後工程である先端パッケージング工程の生産能力も確保した見込みだとも經濟日報は伝えている。
TSMCは今年、今後数年間におけるAppleをはじめとする主要顧客からの先端プロセスと高度な先進パッケージングに対する需要に応えることを目指し、3nmプロセスの生産能力の拡充に加え、CoWoS、SoIC、その他のプロセスをカバーする、中科、南科、竹南にある自社先端パッケージング工場の生産能力も拡大を図っている模様である。
TSMCの2024年における設備投資予算は280億ドル~320億ドルが予定されており、そのうち70%から80%が先端プロセス向け、10%から20%が特殊プロセス向け、残りの10%程度が先進パッケージング、テスト、マスク生産などに充てる予定としている。すでに同社の取締役会は、通期の投資予算のほぼ3分の1に相当する94億2100万ドルの資本支出予算を承認している。2024年は、TSMCが過去に発注した先端プロセス装置が相次いで台湾のほか、日本や米国の新工場にも納入される予定で、第1四半期は大型設備投資が実行されている状況といえる。