2023年第4四半期の売上高は前四半期比14%増と好調

TSMCは1月18日、2023年第4四半期の決算説明会を開催。同四半期の連結売上高は四半期ベースで過去最高を記録した前年同期比で横ばい、前四半期比14.4%増の6255億3000万NTドルとなったものの、純利益は前年同期比19.3%減、前四半期比13.1%増の2387億1000万NTドルにとどまったことを発表した。四半期の粗利益率は53.0%、営業利益率は41.6%、純利益率は38.2%だった。

ドルベースにすると、売上高は前年同期比1.5%減、前四半期比13.6%増の196億2000万ドルで、第3四半期決算時に発表した事前ガイダンスの売上高が188億~196億ドルであったので、予測の上限を達成しており、売り上げ、利益ともに市場予測を上回るなど、底入れ感が出てきたといえる。

TSMCのVP兼CFOのWendell Huang氏は、「業界を先行している3nm技術が順調に立ち上がり、売り上げへ寄与し始めていることが、第4四半期のビジネスの成長を支えた要因である」と業績の伸びの背景を説明している。

  • TSMCの2023年第4四半期の業績

    TSMCの2023年第4四半期の業績と前年四半期/前四半期との比較 (出所:TSMC)

また、第4四半期を踏まえた同社の2023年通年の連結売上高は、前年比4.5%減の2兆1627億NTドルとなった。同社史上最高額を記録した2022年に続く金額レベルで、ドルベースでは同8.7%減、粗利益率は54.4%、売上高営業利益率は42.6%、ROE 26.2%としている。

  • TSMCの2023年通年決算の前年比

    TSMCの2023年通年決算の前年比 (出所:TSMC)

第4四半期の売り上げの伸びをけん引した3nmプロセス

第4四半期の売上高をプロセス別に見ると3nm品の売り上げが全体の15%を占めるまで成長。5nmが35%、7nmが17%で、同社の定義する先端プロセス(7nm以下)が全体に占める割合は67%となっている。ちなみに、日本の熊本工場(JASM)で稼働初期より生産される28nm品については、全体の7%を占めている。

また、2023年通年の売り上げに占めるプロセス別割合は、3nmが6%(2022年は0%)、5nmが33%(同26%)、7nmが19%(27%)となり、先端プロセス全体で58%を占めたほか、より先端プロセスに対する需要の高まりが垣間見える状況となっている。

  • TSMCの2023年第4四半期におけるプロセス別売上高比率

    TSMCの2023年第4四半期におけるプロセス別売上高比率 (出所:TSMC)

  • TSMCの2023年通年のプロセス別売上高比率

    TSMCの2023年通年のプロセス別売上高比率 (出所:TSMC)

アプリケーション別ではHPCとスマホがけん引

2023年第4四半期の売上高を最終アプリケーション別で見ると、HPC向けが43%、スマートフォン(スマホ)向けも43%となっており、この2分野だけで全体の86%を占める規模となっている。これら以外については、車載とIoTが各5%、Digital Consumer Electronics(DCE)が2%、その他が2%となっている。AppleのiPhoneが新モデルを発売するなど、スマホ関連は前四半期比27%増と大きく伸ばして持ち直しつつあることがうかがえる。

また、2023年通年の売上高を最終アプリ別で見ると、HPC向けが43%、スマホ向けが38%となり、この2分野の合計で81%を占めている。それ以外はIoTが8%、車載が6%、DCEが2%、その他が3%となっており、車載のみ前年比13%増とプラス成長を達成(HPCは同横ばいの0%)、他分野はすべてマイナス成長となっている。

  • TSMCの2023年第4四半期における最終アプリ別売上高比率

    TSMCの2023年第4四半期における最終アプリ別売上高比率 (出所:TSMC)

  • 2023年通年の最終アプリ別売上高比率

    2023年通年の最終アプリ別売上高比率 (出所:TSMC)

第4四半期の地域・国別売上高比率トップは米国の68%

2023年第4四半期の売上高を地域・国別で見ると、北米が68%、中国が12%、アジア太平洋が7%、日本が6%、欧州・中東(EMEA)が6%となっている。通年では北米が68%(2022年も68%)、中国が12%(同11%)、アジア太平洋が8%(同11%)、日本が6%(同5%)、EMEAが6%(同5%)となっている。

TSMCは、中国の上海に200mmファブ、南京に300mmファブを有しており、米国の対中半導体制裁の中でも中国市場の売上高が全体の12%を占めており、前年比でも比率を若干ながら高めていることが注目される。もっとも、TSMCの中国向け比率は米国の対中半導体規制が本格化する前は全体の20%を超す規模であったので、それと比べれば半減した状況となっていると言える。

2023年の設備投資額は事前計画を下回る305億ドル

2023年第4四半期の設備投資額は52億4000万ドルとなり、第3四半期の71億ドルから減少することとなった。そうしたこともあり2023年通年で見ると、事前計画の320億ドルを下回る304億5000万ドルとなり、この額は2022年の362億9000万ドルからは58億ドルの減少となっている。同社は2024年の設備投資については280億~320億ドル程度になるとの予測を示している。

2024年の通期売上高は過去最高を期待

TSMCが発表した2024年第1四半期のガイダンスによると、売上高は180億~188億ドル、粗利益率が52〜54%、営業利益率が40〜42%となっている。これを踏まえ同社では2024年通年の売上高についても、生成AI関連の強い需要を中心に伸びることが期待されることから、前年比2割増となることを見込んでおり、その通りとなると同社の売上高記録を再び更新することとなる。同社のCEOのC.C.Wei氏も「2024年は当社にとって健全な成長の年となる」と楽観的な見方を示している。