TSMCが米アリゾナ州の労働組合と、米国における最先端ウェハファブに関する協定を2023年12月に結んだと米国および台湾メディアが報じている。これにより遅れていたTSMCのアリゾナ工場の建設が効率化される見通しだという。

報道によると、TSMCとアリゾナ州建築建設労働者協議会(AZBTC)は、TSMCのアリゾナ工場における外国人労働者の訓練、安全、コミュニケーション、雇用について合意したとのことで、協定ではTSMCは現地の米国人の採用を優先することを約束したが、特定の分野では専門知識を持つ外国人従業員の採用が必要になる可能性があるとしているという。

アリゾナ工場の建設にあたってTSMCは労働者の技能と安全性の問題に直面しており、その影響から当初の計画であった2024年の量産開始を2023年7月に2025年に延期すると発表していた。TSMCは技術経験のある労働力不足が原因だとしていた、この発言が労働組合の不満を招いた模様で、地元の労働組合はTSMCが台湾からスキルの低い労働者を連れてきたと非難。TSMCは台湾から500人規模の労働者を派遣していたが、地元の労働組合は「TSMCが人件費の安い国外から人材を米国に連れてくるための言い訳として建設遅延を利用している」と反発し、米国の労働者が国外の人材に雇用を奪われないようTSMCがビザを発給することを中止するよう要請していた。アリゾナ州内の政治団体も「TSMCが国内の雇用機会創出を約束した半導体支援法の原則を無視している」と主張していた模様である。

今回の労働組合との合意に基づき、TSMCはアリゾナの労働組合と協力しながら従業員のためのトレーニング・イニシアチブを構築し、安全に関する懸念についてオープンな姿勢を維持することとなるという。また、両者の代表は、四半期ごとに招集される委員会を設置し、基準の遵守を確保するほか、TSMCは労働組合にマンパワー・ニーズを満たすために十分な熟練労働者を採用することを約束したともしている。なお、今回の合意によって、TSMCが米商務省からのCHIPS法に基づく助成金の提供を受ける障害がなくなったと見る関係者もいるという。