半導体デバイスと/プロセス技術に関する世界最大級の国際会議「IEDM(International Electron Devices Meeting)」が、米国カリフォルニア州サンフランシスコで2023年12月9日から13日(米国時間)にかけて開催されている。

初日の9日はチュートリアル、10日はショートコースが開催され、基調講演や一般講演は11日から開催される。

昨年同様現地とオンデマンドのハイブリッド形式で開催され、会議登録者に対する動画配信は会議閉会後の12月18日に開始される。

アジア・米国・欧州から1社ずつ基調講演に登壇

IEDMは、今年で69回目を迎える国際会議で、今回のテーマは「Devices for a Smart World Built Upon 60 Years of CMOS(60年におよぶCMOSの歴史の上に構築されたスマートな世界に向けたデバイス)」。1963年に登場したCMOS技術の発展によってスマートな世界がもたらされたが、それを支えているデバイスについて議論しようという趣旨であろう。11日には以下のように、アジア、米国、欧州から1件ずつ合計3件の基調講演が行われる。

  • 「Redefining Innovation: A Journey forward in the New Dimension Era(イノベーションの再定義:新次元時代へ向かう旅)」(Samsung Electronics)
  • 「The Next Big Thing: Making Memory Magic and the Economics Beyond Moore's Law(次にやって来る巨大な物:ムーアの法則を超えたメモリ製造マジックと経済を創造する)」(Micron Technology)
  • 「Semiconductor Challenges in the 5G and 6G Technology Platforms(5Gおよび6G技術プラットフォームにおける半導体の挑戦)」(Ericsson)

パネル討論は、「AI:Semiconductor Catalyst? or Disrupter?」というタイトルで、人工知能は半導体を発展させるのか、それとも破壊させるのかについてTSMC、IBM、Applied Materials、Synopsysの研究者が議論する。なお、パネル討論は後日であってもネット配信されないことに注意が必要である。

200件を超す発表が行われる一般講演

合計200件を超える一般講演は11日午後から13日にかけて39に及ぶセッション構成で行われる。毎日、7~9セッションが並行して行われるので、IEDMに現地で参加しても、実際に聴講できるのはごくわずかなため、現地参加者も後日、動画配信を視聴することができるようになっている。

CMOSロジック分野の注目論文としては、TSMCから3nm CMOSロジックのスタンダードセル技術および製造技術の発表、QualcommとSamsungによる5nm EUV FinFETを採用した5GモバイルSoCの設計・プロセス技術同時最適化などがあげられる。また、TSMCならびにIntelからは2次元単層材料を用いた次世代トランジスタ構造が発表される予定となっている。

BEOL分野では、IBMとSamsungが、次世代Ru(ルテニウム)配線技術を、Applied Materials(AMAT)がタングステン(W)の選択成長によるライナーレスのギャップ埋め込み技術を発表する。

イメージセンサ分野では、Samsung、ソニー、STMicroelectronics、imecからそれぞれ新型センサの発表が行われる。パワーデバイス分野では、IntelはSi基板上に形成した高速動作するGaNデバイスを紹介する。半導体メモリ分野では、次世代の微細DRAMに関して、常連のSamsungやSK hynixのほか、中国のDRAMメーカーであるCXMTが発表するのが注目される。キャパシタレスDRAMの発表も相次ぐ。NAND分野では、Samsungが「1000層を超える3D NANDフラッシュを実現するための基本的な課題」について招待講演するほか、キオクシア・Western Digitalが高速書き込み3D NAND実現のためのウェハ張り合わせ技術について発表する予定となっている。

将来を見据えた話題が分かるチュートリアルとショートコース

チュートリアルとショートコースのテーマは、以下のようなもの。いずれも現在、どんなことを学会や産業界が興味を持っているかわかるものとなっている。

チュートリアルテーマ

  1. 2nm超の革新的技術
  2. 次世代のCMOS技術
  3. 新規登場のFETの信頼性の課題
  4. 先進パッケージングおよびヘテロジニアス集積
  5. アナログ・インメモリ・コンピューティングベースのディープ・ニューラルネットワーク・インタフェース・ハードウエア・アクセラレーション
  6. デバイス・モデリングのツールの進化

ショートコースのテーマ

  • エッジコンピューティングに要求される先進技術
  • 高性能メモリおよびコンピューティングのためのメモリ技術の将来