世界のスーパーコンピュータ(スパコン)に関するランキングの2023年11月版(第62回)「TOP500」が11月14日(米国時間)、米国コロラド州デンバーにて開催されているHPCに関する国際会議「SC23」にて発表された。
毎年2回、6月と11月に発表されるTOP500は今回で62回目。トップとなったのは、米ORNL(米オークリッジ国立研究所)に設置されたエクサスケールスパコン「Frontier」で4連覇を達成した。LINPACK性能は1.194ExaFlopsで、前回の6月の発表から更新はない。
2位は米国アルゴンヌ国立研究所に設置されたエクサスパコン「Aurora」で、LINPACK性能は0.585ExaFlops(585.34PFlops)。3位は2023年より稼働を開始したマイクロソフトのAzureスパコン「Eagle」で、Xeon Platinum 8480C(48コア 2GHz)とNVIDIA Infiniband NDRで構成されている。そのLINPACK性能は0.561ExaFlops(561.20PFlops)となっている。
4位は前回2位だった理化学研究所(理研)のスパコン「富岳」。LINPACK性能も前回同様の442.01PFlopsで変更はない。ただし富岳は、「HPCG(High Performance Conjugate Gradient)」および「Graph500」にて8期連続の第1位を獲得したほか、人工知能(AI)の深層学習で主に用いられる単精度や半精度演算処理に関する性能ベンチマーク「HPL-MxP」(旧:HPL-AI)においては3期連続で第3位を獲得している。
5位は前回3位だった欧州連合(EU)のスパコン共同事業体(EuroHPC Joint Undertaking)のうちの1つで、フィンランドの教育文化省が運営する非営利の国有企業CSC - IT Center for Scienceによる「LUMI」。LINPACK性能は前回の309.10PFlopsから379.70PFlopsへと引き上げられたが、富岳までは届かなかった。また、6位も前回4位だったLUMIと同じくEuroHPCのうちの1つで、イタリアのボローニャに設置されているCINECAデータセンターの「Leonardo」。LINPACK性能は前回の238.70PFlopsから変更はない。
7位は前回5位のORNLのスパコン「Summit」で、LINPACK性能は148.6PFlopsと変更はない。8位はEuroHPCの1つで、スペイン・バルセロナの「Barcelona Supercomputing Center(BSC)」に設置された「MARENOSTRUM 5 ACC」で、LINPACK性能は138.20PFlopsとしている。
9位はNVIDIAの「EOS NVIDIA DGX SUPERPOD」。DGX H100システムとIntel Xeon Platinum 8480Cで構成されており、LINPACK性能は121.40PFlopsとなっている。そして10位は前回6位の米ローレンスリバモア国立研究所(LLNL)の「Sierra」でLINPACK性能94.64PFlopsで変更はなかった。
前回の6月に発表された第61回のランキングと比べると、2位の「Aurora」、3位の「Eagle」、8位の「MARENOSTRUM 5 ACC」、9位の「EOS NVIDIA DGX SUPERPOD」の4システムが新たにトップ10に名を連ねた。トップ10のスパコン設置場所を国・地域別でみると、米国が6、欧州(フィンランド、イタリア、スペイン)が3、日本が1となっており、これまでトップ10に中国勢が入っていたが、11位の中国National Research Center of Parallel Computer Engineering & Technology(NRCPC)の「神威・太湖之光」(LINPACK性能は93.01PFlops)が最高位となっている。
また、富岳以外の日本の主なスパコンシステムとして100以内にランクインしているのは以下の通り。前回は富岳併せて11システムがランクイン。前回97位だった名古屋大学の「Flow」(6.62PFlops)が100位圏外となった代わりにNECのSX-Aurora TUSBASAを搭載した東北大学のスパコンサブシステム「AOBA-S」がランクインする形となっている。
- 32位(前回24位):産業技術総合研究所(産総研)の「ABCI 2.0」(22.21PFlops)
- 33位(同25位):東京大学情報基盤センターの「計算・データ・学習」融合スパコン「Wisteria/BDEC-01」のシミュレーションノード群(Odyssey)(22.12PFlops)
- 50位(新登録):東北大学の大規模計算科学計算システムスーパーコンピュータ「AOBA」のサブシステム「AOBA-S」(17.22PFlops)
- 53位(同41位):宇宙航空研究開発機構(JAXA)のスーパーコンピュータシステム(JSS3)のHPCシステム「TOKI-SORA」(16.59PFlops)
- 62位(同50位):気象庁の「線状降水帯予測スーパーコンピュータ」(13.37PFlops)
- 63位(同51位):気象庁の「線状降水帯予測スーパーコンピュータ」(13.37PFlops) (50位と51位の気象庁のスパコンは主系と副系の2系統で構成。それぞれの順位は1系あたりのLINPACK性能)
- 77位(同63位):海洋研究開発機構(JAMSTEC)の「地球シミュレータ(SX-Aurora TSUBASA)」(9.99PFlops)
- 80位(同66位):研究機関とのみ記載。HPE Apollo 6500システム(AMD EPYC 7543 32C 2.8GHz、NVIDIA A100)を採用したシステム(9.46PFlops)
- 95位(同80位):東京工業大学の「TSUBAME3.0」(8.12PFlops)。
- 100位(同84位):核融合科学研究所の「プラズマシミュレータ・雷神」(7.89PFlops)
なお、富岳について理研は現在、富岳以外のスパコンやクラウドサービス上に、富岳と同等のソフトウェア環境を再現する「バーチャル富岳」の実現に取り組んでおり、富岳のリッチなソフトウェア環境を世界中で、誰でも使えることを目指しているとしているほか、ポスト「富岳」時代の次世代システムの研究を進めており、富岳で得た知見を次世代スパコンの研究開発の検討に活用していくとしている。