Intelは9月26日、記者向けの技術解説セミナー「Intel Tech Talk」を開催し、先般米国にて開催された「Intel Innovation 2023」の内容や、次世代CPU「Meteor Lake」のアーキテクチャーについての説明を行った。

Intel Innovation 2023のハイライトを紹介

セミナー前半では、Intel執行役員 技術本部長の町田奈穂氏が2023年19日~20日に行われたIntel Innovation 2023で紹介された技術トピックのハイライトについて説明を行った。

最初に触れたのは、将来の大規模半導体パッケージを可能にするとされている「ガラス基板技術」。従来の有機基板と比較して微細化や高密度化、高温度動作などを可能にするほか、基板面積の制限も改善されることが期待されており、データセンターやAI処理で用いられるGPUをはじめとする複数のチップレットを搭載する大規模半導体パッケージの進化に貢献するという。Intel Innovation 2023では実際のガラス基板を使ったウェハが展示されたとのことで、同社による市場投入は2020年代後半を予定するとしている。

町田氏は、「2030年以降もムーアの法則が成り立つという見通しが得られている。Intelは技術革新を続けてムーアの法則にチャレンジし続けていく」と述べた。

  • 4年間で5つのプロセスノードの実現は順調に進展している

    4年間で5つのプロセスノードを実現するという同社の目標は順調に進展している(出所:Intel)

また、開発者をサポートする新たな戦略「AI Everywhere」についても触れ、「より広くアクセスできるAI技術を提供することでより多くの人々がAIの恩恵を受け、人々の暮らしを豊かになれば」とする。

さらに、異なる製造プロセス技術で作られたチップを相互接続可能にする技術標準「UCIe」(Universal Chiplet Interconnect Express)の進捗も説明した。特にIntel3でで作られたチップレットとTSMCの3nm(N3)プロセスで作られたSynopsysのチップレットを1パッケージ上に統合したテストチップ「Pike Creak」を披露できたことは注目できるポイントだとした。

このほか、2023年後半に市場投入する予定の3つの製品ソリューションの紹介として、「Intelデベロッパークラウド」の一般公開について言及。ソフトウェア開発者がクラウド環境でさまざまな新しいIntelの製品を試すことができ、Intelの「GPU Max」やAIソリューションである「Gaudi/Gaudi2」を評価したり、そのためのアプリ開発をすることが可能になるという。

  • 2023年後半に発表予定の製品ソリューション群

    2023年後半に発表予定の製品ソリューション群(出所:Intel)

加えて、oneAPIの活用によりCPU、GPU、AIアクセラレータ、FPGAといったハードウェアの違いを意識すること無くソフトウェアを開発することが可能となるほか、より最適化を強化したことでディープラーニングや推論を高速に処理することができる点も注目してほしいとした。

そして、2023年12月14日に発売予定の第5世代XeonスケーラブルプロセッサとCore Ultraプロセッサー(開発コード名:Meteor Lake)を紹介。コア数とキャッシュ容量を増大させつつも、製造技術の改善により従来と同じ消費電力に留めた製品となり、CPUを載せ替えることでより高い演算性能を体験できるとした。

次世代CPU「Meteor Lake」のアーキテクチャーについて説明

後半は大きな技術革新があるという次世代CPU「Meteor Lake」のアーキテクチャーについて、Intel技術本部部長の安生健一郎工学博士が説明した。

Meteor Lakeの重要な柱として、クライアント向けで電力効率を重視して作られたプロセッサーであり、クライアント向けの製品として初めてAIエンジン(NPU)を内蔵してAI機能を広範に提供する点を挙げたほか、グラフィック性能の向上や、Pコア(Performance Core、高性能コア)・Eコア(Efficiency Core、高効率コア)を一新し、同社の最新プロセスとなる「Intel 4」を採用した点も特長として挙げていた。

  • Core Ultraプロセッサーの重要な柱

    Core Ultraプロセッサーの重要な柱(出所:Intel)

なお、同社はガラス基板に移行した新たな半導体の世界について、「発表したばかりで実際にどう使われていくかの情報公開はしてないが、時期的に見てもチップレットとガラス基板の両方を技術として持ち合わせており、トランジスタの3D化や積層技術を共に使われていくものだと信じている」と述べており、今後、ガラス基板の技術動向を中心にパッケージングの技術進化に注目が集まっていくだろうとしていた。