Intelは、マルチビームマスクライターを手掛ける子会社IMS Nanofabricationの株式のうち、約10%ほどをTSMCに売却することで合意。この取引は2023年第4四半期中に完了する見通しであることを発表した。

この取引に関わる評価額は約43億ドルだとしているが、IMSの株式については、6月にも米国の投資会社でキオクシアにも投資しているBain Capitalに対して、約20%ほどが売却されることで合意されたばかり。Intelはこれらの株式売却で得た資金を、今後の製造拡張投資に回す模様である。

IMSは、半導体製造の際に用いられるフォトマスクを製造する際に必要なマルチビーム描画装置(マスクライター)を製造しており、第1世代のマルチビームマスク描画装置「MBMW-101」に加え、2019年第1四半期には第2世代マルチビームマスク描画装置「MBMW-201」を5nmプロセス向けマスクライターとして市場に投入するなど、プロセスの微細化への対応を着々と進めてきた。

  • IMS Nanofabricationのマルチビームマスクライターで描画したフォトマスク

    IMS Nanofabricationのマルチビームマスクライターで描画したフォトマスク (出所:Intel)

  • 世界中で広く使われているIMSのマルチビームマスクライター「MBMW-101」

    世界中で広く使われているIMSのマルチビームマスクライター「MBMW-101」 (出所:IMS)

Intelは2009年、IMSへの初の投資を実施した後、最終的に2015年に残りの株式を取得しており、それ以降、IMSは従業員と生産能力を4倍に拡大してきており、今後の高NA EUV露光装置の投入に合わせて、同社のマスクライターの重要性も増していくことが予想されている。そのため、Intelでも引き続きIMSの株式の過半数を保有し、子会社として事業を継続させていく模様である。

今回の株式売却について、Intelのディベロップメント担当バイスプレジデントのMatt Poirier氏は「IMSが最先端ノードに向けた重要な露光技術の進歩を実現するための先駆者として取り組んでいる先端半導体業界に対して、深い協力関係を築いていることを示すものであり、半導体製造のエコシステム全体に利益をもたらすものとなる。IMSの独立性が強化されたことは、今後10年以上にわたるマスクに対するマルチビーム描画装置の成長機会を加速させることに役立つ」と述べているほか、TSMCで事業開発を担当するシニアバイスプレジデントのKevin Zhang氏は「TSMCは2012年以来、先端のテクノロジーノード向けマルチビーム描画装置の開発でIMSと協力してきた。今回の投資は、技術革新を加速し、より深い異業種でのコラボレーションを可能にすることを目指し、TSMCとIMSの長期的なパートナーシップを継続させるものである」と述べている。