TechInsightsがHuawei製5G対応スマートフォン(スマホ)「Mate 60 Pro」に搭載されているSoCが同社子会社HiSiliconが設計し、SMICの7nmプロセスで製造されたことを報告したことに対し、米国政府は正確な情報を収集を図ったうえでコメントを行うとサリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が、9月5日付の定例記者会見で述べた模様である。

これは記者団からのTechInsightsの分析結果は、米国の対中半導体輸出規制が失敗していることを証明するもの、もしくは中国でこの輸出規制が違反したことを証明するものではないのか、といった質問を受けてサリバン氏が答えたもの。同氏は「問題となっているチップについては、正確にその特性と構成に関する情報が得られるまでコメントは控えるつもりだが、自身の観点から言えば、この事実が伝えていることは米中の商業的デカップリングという広範な問題ではなく、国家安全保障上の懸念に限定して焦点を当てた一連の高い規制を設けるという取り組みを継続すべきだということであり、今後もその取り組みは継続していく」と述べたほか、「問題のチップの特徴を明らかにするという点では、それについて最終的なコメントをする前に、さらに多くの情報を得る必要がある」と付け加えている。

米Bloombergでは9月6日付で、Huaweiの5Gスマホに中国で製造された先端半導体が採用されているというニュースは、中国国内の一部から熱狂的な支持を呼ぶとともに、米国政府が中国ハイテク産業に向けた規制措置が有効なのかどうかといった臆測を生じさせていると言った論調の記事を掲載している。

SK hynixがHuawei 5Gスマホの搭載メモリの出所調査を開始

今回のTechInsightsの分析では、SoCの製造元のほか、LPDDR5およびNANDにSK hynixのものが搭載されていることも明らかにされている。これを受けてSK hynixが自社製品がどのようなルートを辿ってHuaweiの5Gスマホに搭載されることになったのか内部調査を開始した模様であると韓国メディアであるThe Korea Timesなどが報じている

SK hynixのメモリ製品は、Huaweiの5Gスマホに搭載された唯一の海外半導体企業による製品で、SK hynixは「米国がHuaweiへの半導体輸出を規制して以来、同社との取引を一切行っていない。この分析の公表を受けて、我々はHuaweiの入手ルートに関して調査を開始した。SK hynixは米国政府の輸出規制を厳格に遵守している」と述べたという。

なお、SK hynixは、中国に半導体メモリ量産工場を有しており、場合によっては米国政府がそれら工場の操業を事実上禁止する可能性もあるが、半導体サプライチェーン関係者によると、DRAMやNANDは半導体企業と直接取引しなくても一般市場で購入したり、匿名あるいは別名義などを使えば比較的入手しやすい製品であるため、製品の流通を完全に把握するのは難しい可能性があるという。Huawei自身も中国内で複数の半導体工場を獲得し、自ら半導体の製造に乗り出そうという動きを見せている模様だが、その多くは別名義で動いている模様で、実態の把握は難しいものとみられる。