東北大学とエコチル調査宮城ユニットセンターの両者は9月5日、「子どもの健康と環境に関する全国調査」(エコチル調査)の詳細調査に参加した4988人の2歳、4歳時点での血圧平均値を算出し、体格、基礎疾患、環境要因などとの関連を検討した結果、4歳の血圧に影響する因子として、男児、肥満、親の喫煙、母親の妊娠高血圧の既往歴、親の学歴(高等学校卒以下)を指摘し、そのうち、男児、肥満、親の喫煙は、2歳の血圧にも影響があることを明らかにしたことを共同で発表した。

また、喫煙の影響についてさらに調査したところ、2歳時点から子どもの血圧に影響を与える環境因子として親の喫煙が指摘され、幼児期からの受動喫煙を回避することが、将来の生活習慣病や高血圧を予防するために重要であることを示したことも併せて発表した。

同成果は、東北大大学院 医学系研究科 発達環境医学分野の大田千晴教授(エコチル調査宮城ユニットセンター兼任)、同・大学院生の金森啓太医師らの共同研究チームによるもの。詳細は、小児の疾患や発達障害に関する全般を扱う学術誌「Pediatric Research」に掲載された。

エコチル調査は、胎児期から小児期にかけての化学物質ばく露が子どもの健康に与える影響を明らかにするため、全国で約10万組の親子を対象として、環境省が2010年度から開始した大規模出生コホート調査だ。臍帯血、血液、尿、母乳、乳歯などの生体試料を採取し保存・分析すると同時に、追跡調査も行い、子どもの健康と化学物質などの環境要因との関係について、解明が続けられている。

エコチル調査は国立環境研究所を中心にして、国立成育医療研究センターにメディカルサポートセンターを、各地の15大学などに地域の調査拠点となるユニットセンターを設置し、環境省と共に各関係機関の協働によって実施されている。今回、東北大と共同で発表したエコチル調査宮城ユニットセンターは、東北大大学院 医学系研究科内(環境遺伝医学総合研究センター)に設置されている。

これまでエコチルに関した研究はいくつも発表されているが、今回の研究ではこれまで大規模なデータがなかった、日本人幼児の血圧値と、体格、基礎疾患、環境要因などとの関連を検討したという。

まずエコチル調査の全体調査・詳細調査で収集したデータを使用し、2歳、4歳児の血圧平均値が算出された。その結果、2歳時点では、男児であること、親が現在喫煙していること、4歳時点では、母の妊娠高血圧の既往、親が現在喫煙していること、母または父の学歴(高等学校卒以下であること)が、収縮期血圧の高さに関連していることが判明した。

また喫煙の影響についてさらに調査するため、両親喫煙なし、片方が喫煙あり、両親が喫煙の3つの群で解析が行われた。すると、両親喫煙群では2歳、4歳時点での収縮期血圧が、ほかの群に比べ統計学的に有意に高値であることが明らかになったという。

さらに、ほかの要因との影響を検討するため、算出した血圧値のうち、95パーセンタイル値以上の子どもについて調査を行った結果、上位95パーセンタイル値以下の群に比べ、統計学的に有意に肥満度が高いことも確認されたとする。

  • 2、4歳時の収縮期血圧と保護者の喫煙との関連。両親喫煙なし、両親いずれかが喫煙あり、両親が喫煙、の3グループで解析。2、4歳の収縮期血圧は、両親が喫煙および一方が喫煙のグループでは、両親が喫煙していないグループに比べ、有意に高値だった。

    2歳、4歳時の収縮期血圧と保護者の喫煙との関連。両親喫煙なし、両親いずれかが喫煙あり、両親が喫煙、の3グループで解析。2歳、4歳の収縮期血圧は、両親が喫煙および一方が喫煙のグループでは、両親が喫煙していないグループに比べ、有意に高値だった(図中のPの値が0.05以下を「統計学的有意」とする)。(出所:東北大プレスリリースPDF)

研究チームはこれらの研究結果から、受動喫煙や肥満が幼児期の血圧の高値に関連しており、将来の高血圧につながる可能性が示唆されたとしている。ただし、今回の研究では受動喫煙の程度を両親の喫煙の有無のみで判定しており、1日の受動喫煙の長さや期間では判定していないとした。

今後は、現在も進行中の6歳、8歳、10歳、12歳という学童期の子どもたちの血圧の推移と環境因子との関連を調査するとともに、将来の高血圧を予防する方法の探索を中心に研究を進めていく予定としている。