今回試作された直径10mmのセンサ素子は、一度に4種類の半導体式センサを搭載可能だ。産総研で開発されたポータブル測定器には、8種類の半導体式センサを2個のセンサ素子にそれぞれ4つずつ搭載された。1つは一般的な半導体センサ4種類、もう1つは一般的な半導体センサ2種類とバルク応答型センサ2種類である。

ポータブル測定器によって養殖ブリの4つの鮮度状態に対応した指標ガスを吸引し、8種類の半導体式センサの抵抗値を計測したところ、その値は4つの指標ガスの構成成分の濃度比によって変化した。これらの抵抗変化量はセンサ応答値であり、それらから4つの鮮度状態に分類するためにニューラルネットワーク(NN)が用いられた。

まず、4つの鮮度に対応した指標ガスを同じ工程で製造してガスバッグに充填し、繰り返し測定を行い、4つの鮮度で合計240データが蓄積された。交差検証で指標ガスを正しく分類できるのか検証を行ったところ、144データが正解で正答率は0.600だったとする。

そこで正答率を高めるため、1個のセンサあたり複数の応答値を用いる方法が検討された。指標ガスの導入を終了させて半導体式センサの電気抵抗値が復元する区間から得られるセンサ応答値も解析に利用することで、1データあたりでセンサ8個×複数点のセンサ応答値となった。これらについて交差検証により畳み込みNNで分類したところ、240データのうち229データが正解となり、正答率が0.954にまで向上した。

最後に、指標ガスで学習した畳み込みNNを用いて、養殖ブリ刺身の鮮度判定が行われた。ブリ刺身をガスバッグに入れ、購入直後のニオイを室温下(約22℃)で測定し、家庭用冷蔵庫(2~5℃)で1日保管して、室温下に戻して再度の測定を行ったところ、購入直後は生食で可食、1日保管後は加熱調理であれば可食との判定結果となったとする。

  • 8種の半導体式センサのうち、3種の電気抵抗値の変化と学習データに用いられたセンサ応答値。入荷直後、生食、加熱調理、腐敗の目安となる指標ガスが計測された。図中の黄色の区間で指標ガスが導入される。赤は一般的なn型半導体式センサ、青は一般的なp型半導体式センサ、緑はバルク応答型センサの抵抗値が示されている。

    8種の半導体式センサのうち、3種の電気抵抗値の変化と学習データに用いられたセンサ応答値。入荷直後、生食、加熱調理、腐敗の目安となる指標ガスが計測された。図中の黄色の区間で指標ガスが導入される。赤は一般的なn型半導体式センサ、青は一般的なp型半導体式センサ、緑はバルク応答型センサの抵抗値が示されている。(出所:産総研Webサイト)

研究チームは今後、ほかの魚肉に対しても検証するなど、今回の技術を進展させていくとのこと。それに加え、多様な魚肉のデータを蓄積してK値を判定できるデータベースの構築も行うとする。さらに、ポータブル検知器からリアルタイムにK値を出力する改良などを順次行い、早期の実用化を目指すとし、魚介類の干物などの熟成度合いのモニタリングへの適用可能性も検討するとしている。