国立天文台(NAOJ)は7月4日、これまでcmサイズよりも小型化が困難だった、電子回路用の部品である「アイソレータ」を、体積比で一気に3桁も超小型化してmmサイズを実現できる可能性を有する新たな基礎原理を実証したことを発表した。
同成果は、NAOJ 先端技術センター(ATC)の増井翔特任研究員、同・鵜澤佳徳技術主幹らの研究チームによるもの。詳細は、「IEEE Microwave and Wireless Technology Letters」に掲載された。
電子回路において、信号が正しい方向に伝わるように制御する部品の1つとしてアイソレータがあり、同部品は天文学分野においても重要だ。現在、NAOJでは電波観測装置の開発が進められているが、極低温部に設置されて電波を捉える超伝導センサと、センサからの信号を読み出す増幅器の間にアイソレータを入れることで、センサへ信号が逆流することを防ぐ仕組みだ。
また近年、国内外で研究開発が進んでいる超伝導型量子コンピュータでも、極低温部に設置された量子ビットと、その状態を読み出す増幅器の間にアイソレータが必要だ。同部品が間に挿入されることで、信号の逆流によって量子ビットの量子状態が壊れるのを防ぐのである。
現在広く使われている磁性体を利用したアイソレータは、原理的にその大きさをcmサイズ(典型的には3cm×3cm×1cmほど)より小さくすることが困難だという。電波を受信する超伝導センサを多数並べた多素子カメラの開発では、アイソレータを含むさまざまな部品も多数必要となるため、部品のさらなる超小型化が求められており、どう小型化するかが大きな課題となっているとする。またこのアイソレータの超小型化の実現は、100万量子ビット規模の大規模量子コンピュータの実現にも必須だとする。
そうした中で研究チームは今回、2つの周波数ミキサと2つの位相制御回路を使った極めて単純な回路構成で、アイソレータが実現できることを発案。そして、その新原理を理論的および実験的の双方で実証することに成功したという。