公益財団法人千葉市産業振興財団は6月22日、NTT東日本 千葉事業部と共催で、中小企業者・創業者向けのイベント、「生産性向上のためのICT活用・体験フェア」を千葉市の「Chiba Mini NTTe-City Labo」で開催した。両者は今年の2月、連携協定を締結しており、今回のイベントは、その協定に基づく初のイベントとなる。

千葉市産業振興財団は現在、ICT導入に係る最大300万円を上限とする助成を行っており、継続して中小企業者等の生産性向上のための支援を展開している。

このイベントにおいてNTT東日本は、千葉市産業振興財団を利用する中小企業や創業者に対し、自社が提供するソリューションを紹介すると同時に、助成金申請の支援も行う。

「Chiba Mini NTTe-City Labo」は、千葉県内の自治体や企業ユーザーを対象としたミニショールームだ。NTT東日本は、同社グループによる取り組みやソリューションを体感できる施設として、2022年5月に東京都調布市に「NTTe-City Labo」をオープン。「Chiba Mini NTTe-City Labo」は千葉県内の顧客を中心に、より身近でアクセスできるように、「NTTe-City Labo」のコンセプトを踏襲し、展示内容をコンパクトにしたミニショールームとして今年の3月にオープンした。

今回のイベントでは、NTT東日本が提供する「AIよみと~る」と「おまかせRPA」を組み合わせ、FAX等で送られてきた手書き伝票や請求書をスキャナや複合機等で読み取り、画像からAI-OCRによってテキストデータ化して、Excelに保存してRPAで自動化するソリューションや、オンラインストストレージの「コワークストレージ」、スマートフォンを使って会社の固定電話番号での発信ができる「ひかりクラウド電話 for Webex Calling」などを展示していた。

  • 「AIよみと~る」と「おまかせRPA」を組み合わせたソリューションを説明する様子

    「AIよみと~る」と「おまかせRPA」を組み合わせたソリューションを説明する様子

「Webex Calling」はシスコシステムズの製品だが、NTT東日本では、「Webex Calling」のライセンスや対応端末の販売、およびユーザーアカウントの作成や権限付与などの設定代行オプションを昨年の10月から提供している。会場では来場者が、音声品質を確認したり、実際に会社の固定電話番号で相手に着信したりしている様子を体感していた。

  • 会場で「Webex Calling」の音質を体感

    会場で「Webex Calling」の音質を体感

また、2022年12月5日の改正航空法でレベル4飛行が解禁され、有人地帯で補助者なしでの目視外飛行が可能になり、より注目が集まっている「ドローン」も展示。農薬散布ができる農業用ドローン「AC101」や、完全自動巡回を実現する小型の「Skydio」が紹介されていた。

  • 農業用ドローン「AC101」(黄色のドローン)と小型の「Skydio」(右下)

    農業用ドローン「AC101」(黄色のドローン)と小型の「Skydio」(右下)

施設管理を行っている男性は、倉庫内の熱だまりを検知したり、倉庫の壁等に破損がないかをチェックしたりする際にドローンを使ってできないか、関心を寄せていた。壁の点検では、足場を組む費用がかさむため、ドローンを利用することで、その費用を削減する効果を期待しているという。

運送業の男性が注目していたのは、NTTが開発した耳元だけに音を閉じ込める世界初の「パーソナライズドサウンドゾーン」(以下PSZ)技術を用いた、パーソナルイヤースピーカー「nwm(ヌーム)」だ。

「nwm」はオープンイヤー型なので、外部の音も聞き取ることができ、PSZ機能搭載で「耳元だけに音を閉じ込める」ことにより、周囲への音漏れを防ぐ。スマートフォン/PCと有線接続することで、通話が可能だ。帳票系のシステムやチャットボートなどとサービス連携することで、音声入力が可能になるという。

現在、男性の会社ではトラックドライバーにハンズフリーのしくみを導入しているが、運転中の場合、メモをとるために停車しなければならず、通話しながらメモができれば、効率アップにつながるという。

  • 椅子に付けられたスピーカーで「パーソナライズドサウンドゾーン」(PSZ)技術体感できた

    椅子に付けられたスピーカーで「パーソナライズドサウンドゾーン」(PSZ)技術体感できた

水産品の仲卸業の会社を立ち上げたばかりの夫婦が注目していたのは、氷感技術を使った「電圧冷蔵庫」(氷感庫)だ。NTT東日本が冷蔵庫を展示するというのは意外だが、同社は地域の優れた技術を持った企業とのオープンイノベーションを推進しており、この製品もその一環で提供されている。

  • 「電圧冷蔵庫」(氷感庫)。プレハブ型の製品もある

    「電圧冷蔵庫」(氷感庫)。プレハブ型の製品もある

製品自体は愛知の氷感サプライズのものだが、同社は2021年からNTT東日本と協業体制を確立し、センサーによる冷蔵庫内の温湿度管理やカメラによる品質の確認など、NTT東日本のIoT技術を活用した、長期保存の実証実験を行ってきた。

氷感技術とは、食材に直接高電圧をかけ、氷点付近あるいは氷点以下の温度帯で保存することで鮮度保持を可能にする技術。食材に合わせて条件を設定し、鮮度を保持することで魚や肉の長期保存ができ、一部の青果物は熟成することで、さらに旨みや甘みが増すという。

水産品仲卸の男性は、「これまで築地で売れ残ったものは、価格を4分の1程度にして、加工用に販売するしかなかったが、この冷蔵庫を使うと魚の旬の時期を延ばすことができる。価格を維持したまま他の地域の販売も可能になり、市場の最適化につながる」と期待を寄せていた。

  • 水産品仲卸業の夫婦が「電圧冷蔵庫」を確認する様子

    水産品仲卸業の夫婦が「電圧冷蔵庫」を確認する様子

NTT東日本は今後、こうした地域企業とのオープンイノベーションを積極的に推進し、地域の中小企業の支援に注力していくという。