地域特性に合わせ、千葉の人々に体験してもらいたいものを集結

千葉の地域循環型社会実現に向けた実証・体感フィールドとして、NTT東日本の千葉事業部は、ミニショールーム「Chiba Mini NTTe-City Labo」を自社オフィス内にオープンした。

2022年5月、NTT東日本グループによる幅広い分野の取り組みやソリューションを体感できる施設として、「NTTe-City Labo」が東京都調布市にオープン。今回新たに開設された「Chiba Mini NTTe-City Labo」は、そのコンセプトを踏襲しつつ、より千葉県内の自治体や企業にフォーカスした、地域密着型の取り組みとなっている。

「NTTグループとして、地域の皆様と一緒に事業をやらせていただいてきた中で、通信を生かしながら、どのような形で皆様のお役に立てるかをずっと考えてきた」と話す、NTT東日本 千葉事業部 企画部 経営企画担当の上栗絵梨香氏。

上栗氏は、「Chiba Mini NTTe-City Labo」を開設した狙いを次のように語る。

「地域の産業や特性に合わせて、NTTは『何ができるのか』『何を考えているのか』といったことは、言葉だけでは伝えにくいので、実際に体験していただく施設を作りたかった。中でも、千葉という地域特性を鑑みて、千葉の皆様に実際に体感していただきたいものを集めた施設が『Chiba Mini NTTe-City Labo』となります」

  • NTT東日本 千葉事業部 企画部 経営企画担当 上栗絵梨香氏

千葉で盛んな「一次産業」にフォーカス

「Chiba Mini NTTe-City Labo」はB to B型のショールーム。開設に至ったコンセプトとしては、「まず地域の声を聞く」ところからスタートしており、見学対象は、地域創生に向け取り組んでいる自治体やNTT東日本と共に新たなビジネス展開を検討する企業としている。

上栗氏は「地域の皆様が何を考え、何に興味を持っているかを伺っていく過程に最も時間をかけました。いろいろな方の意見を広く聞き、いろいろな地域の方々が何に課題をお持ちなのか、何を必要と感じているのか、その一つ一つを勉強させていただきながら、少しずつ作り上げています」と話す。

「スケールとしては“ミニ”になりましたが、決して調布のラボの縮小版を作るつもりはありません。千葉の皆様が必要と感じていただけるものを、積極的に取り入れていこうと思っています」と、千葉ならではの「実証・体感型ショールーム」を作り上げていこうという意気込みを見せる上栗氏。

実際、千葉の地域特性にフォーカスするという言葉通り、展示品も、調布と重複しているものもあれば、「Chiba Mini NTTe-City Labo」独自のものもあるという。

「千葉は、農業をはじめとした一次産業が盛んな土地なので、まずはそこに注力しています。千葉で一次産業を営んでいる方や店舗を経営している方から、『どんなに興味があっても、遠くまで見に行く時間がなかなか取れない』『身近に体験できる環境があれば検討の余地もあるのに』というお話を聞き、千葉にオープンする意義を強く感じました」(上栗氏)

「Chiba Mini NTTe-City Labo」の展示品を紹介

3月24日にオープンしたばかりということもあり、現時点での展示品は4点となっている。

食材の鮮度を保ちフードロスを削減する「氷感冷蔵庫」

「氷感冷蔵庫」は、氷感サプライズが手掛ける新技術を使った冷蔵庫で、食材に3000~5000V程度の電圧をかけることにより、凍ることなく0度以下の温度に保つことができるのが特徴。食材は凍ってしまうと、水分が膨張し、細胞壁が壊れてしまうため、解凍時に食材の水分、いわゆる「ドリップ」が流れ出てしまう。しかし、「氷感冷蔵庫」では、0度以下でも氷結しないため、生のおいしい状態を長くキープできるという。

  • 食材を0度以下の温度に保つことができる「氷感冷蔵庫」

温度を下げることで腐敗を防ぐだけではなく、魚や肉の油分が全体に回りやすくなるほか、デンプンが糖に変わる“雪下にんじん”のような効果も期待できるなど、食材によっては長期保存プラスアルファを見込める。

  • 2カ月間以上保冷したほうれん草。左が通常の冷蔵庫で、右が氷感冷蔵庫

先端技術で新たな鑑賞方法を提案する「デジタルアート」

NTTのグループ会社であるNTT ArtTechnologyが手掛けるオンラインデジタル絵画サービス「ArtTechView」は、非常に高精細なスキャン技術によって、作品の色彩や素材の質感までリアルに再現することができる。

  • 作品の色彩や素材の質感までリアルに再現する「デジタルアート」

「デジタルアート」は、絵画や浮世絵を高精細スキャンによってデジタル化するだけでなく、そのデータをいかに活用するかを重視している。例えば、コロナ禍などで美術館や博物館に足を運びにくいような状況、介護施設などでなかなか外出できない人、さらに海外の人に向けての配信など、芸術作品をより身近に感じることができる技術として生かしていくことが主題となっている。

農薬散布など農業分野で活躍する「ドローン」

NTTのグループ会社であるNTT e-Drone Technologyが開発する農薬散布用の国産ドローン。およそ7キログラムという軽量かつコンパクトな設計で、女性や高齢者でも扱いやすい点を特徴としている。農業従事者の高齢化問題に応じて、使いやすさも重視されており、操縦講座などを組み合わせるなどの取り組みも行われている。

  • 農業ドローン「AC101」

農業だけでなく、漁業や林業など一次産業において、いかにドローンを活用するかも今後の課題であり、より幅広いニーズを探っていきたいという。

音を閉じ込める新時代のパーソナルイヤースピーカー「nwm」

NTT sonorityが手掛けるパーソナルイヤースピーカー「nwm(ヌーム)」は、今回の展示品中では唯一のコンシューマ向けの商材だ。その特徴は、「PSZ(パーソナライズドサウンドゾーン)」技術を活用することにより、オープンイヤータイプでありながら、音漏れが最小限に抑制される点。音漏れをさせないのではなく、逆相によって、漏れている音を聞こえないようにするという発想で、音楽を聞きながら、ほかの外部音も同時に聞くことができる。

  • パーソナルイヤースピーカー「nwm」

PSZ技術の活用において、まずはイヤースピーカーとして商品化されているが、PSZ技術の一番コアな部分は音の識別であり、騒音の大きな工場の中でも、指示者の声だけをマイクで拾って、相手に伝えるといったことも可能となる。