Intelは、6月21日に開催した「Intel Foundry Investor Webinar」でアナリストや投資家に対し、新しい「社内ファウンドリモデル」について説明し、新モデルへの移行が、2025年までに80億~100億ドル以上のコスト削減を実現するという同社の掲げた目標を達成するための鍵を握ると語った。
Intelは長期目標として非GAAP粗利益率60%、営業利益率40%の達成を掲げており、その取り組みの中で、社内ファウンドリモデルへの移行などによる効率性の向上が収益性の向上につながることを期待していると、Intel EVP兼最高財務責任者(CFO)であるDavid Zinsner氏や同社コーポレートVP兼経営企画グループゼネラルマネージャーのJason Grebe氏が説明を行った。
社内製品も製造の視点ではファブレス顧客扱いに
社内ファウンドリモデルでは、Intel社内の製品事業グループを社内ファブレス顧客として、Intel Foundry Service(IFS)を利用する社外の顧客企業と同じ立場で、同社の製造事業グループ(社内ファウンドリ)へ製造委託することになる。社外のIFS顧客の立場でみれば、Intel社内の製品事業グループが同じ立場になるということである。
Intelの製造グループは、競合ファウンドリと同様に性能と価格を通じてファウンドリ市場で量を競う必要が出てくる。一方のIntelの製品事業グループは、柔軟に社外のファウンドリを選ぶことができるようになる。ただし、すでにIntelは自社シリコンの約20%を外部に製造委託しているという。
新たな運営モデルでは、Intelの製造グループは初めて独立した損益計算書(P&L)に責任を持つことになる。2024年第1四半期から、報告対象となる損益計算書には、製造、技術開発、Intelファウンドリサービス(IFS)を含む新しい製造グループセグメントの損益計算が掲載されることになっている。
つまり、社内ファブレス製品事業部門からも相当な利益を含む製造委託費を徴収することで、Intelは2024年にも製造売上高が200億ドルを超える世界第2位のファウンドリになると予想している。
社内ファウンドリモデルでコスト削減は可能か?
Grebe氏は、「すでに多くの内部分析や社外ベンチマークを行って、社内ファウンドリモデルによってコスト削減ができることを確認した」と以下のような3例を挙げた。
- 社内製品事業部門から要求される「優先」ウェハ(いわゆる特急ロット)扱いは高コストで、工場の効率を低下させる。将来的には、この割増しサービス料金は製品事業部門が負担することになり、競合他社と同等の特急便数に削減されることが期待され、それによるコスト削減と高効率化により、長期的には年間5億ドルから10億ドル規模の節約が期待できる。
- Intelのテスト時間は現在、競合他社の2~3倍ほどだが、今後は社内製品事業部門にはテスト時間に基づいて市場価格が請求されるため、製品事業部門はプレシリコン設計を選択することで、これらのテスト時間が短縮され、最終的には年間約5億ドルの節約が期待される。
- ウェハのステップ数、つまり製品設計の物理的な反復回数を減らすことで、5億~10億ドルのコスト削減が期待できる。
Intel 18Aで微細化のトップランナーに
Intelは、製造グループを独立したビジネスとして確立し、損益を管理する決定権を持たせることで、外部顧客に生産能力と供給約束の明確なルートを提示できるようになるとしている。
また、かつて同社はプロセスの微細化競争ではトップを走っていたが、14nmプロセスで歩留まりが低迷して以降、競合他社に追い越される状況となっている。しかし、「Intel 18A」(TSMCの2nm相当)で再びトップに返り咲くことを掲げている。
先般発表されたドイツの工場建設計画でも、政府補助金が68億ユーロから99億ユーロに引き上げられた代わりに、独政府の要望でオングストローム世代の最先端ロジックプロセスが導入される予定としている。