Direct-SATORI法では、従来の遺伝子検査の律速だった「遺伝子の抽出・精製」および「遺伝子の増幅」の工程を省略でき、検出時間の大幅な短縮と多種ウイルスの並列/多項目検出が実現された。また、全自動のopn-SATORI装置を最適化することで、Direct-SATORI法を用いた全自動遺伝子検査も実現されたという。なお詳細な改善点は以下の通りとする。
- 生体試料からウイルス遺伝子を迅速抽出する新手法を開発(界面活性剤の添加と5分間の加熱処理のみのシンプルな手法で自動化対応)
- 8種類の病害ウイルスを並列検出するための新自動機構の開発(opn-SATORI装置に8連自動分注ユニット・自動加熱ユニットを導入)
研究チームはDirect-SATORI法の検証実験として、トマトの葉を用いた全自動遺伝子検査を実施。その結果、8種類の病害ウイルス(トマトモザイクウイルス・トマトアスパーミウイルス・トマト黄化えそウイルス・キュウリモザイクウイルス・ジャガイモXウイルス、ジャガイモYウイルス・タバコモザイクウイルス・タバコ壊死ウイルス)を、15分間で全自動検出することに成功したという。
同実験での検出時間はPCR法の10分の1以下まで短縮され、感度96%、特異度99%が達成された。また、検証実験に用いられたトマトの葉はわずか1mgであり、従来の検査法では50mg程度を要していたことから、現場で微量サンプルを採取し迅速検査へつなげる上で、Direct-SATORI法が有効であることが示されたとする。
研究チームによると、Direct-SATORI法を用いることで、ポストコロナ社会において多種感染症を識別・診断するための汎用的な遺伝子検査法となることが期待できるという。また同手法における消耗品のコストは、8種類の病原ウイルスの同時検査で約15.6米ドルと低いことから、今後、Direct-SATORI法が、迅速かつ低コストな遺伝子検査のニーズを満たすとともに、医療から農業に関連するさまざまなウイルス病の予防に資することも併せて期待できるとしている。