COMPUTEX TAIPEI 2023の2日目にあたる5月31日、NXPは“Shaping Ecosystems to Master Complexity”と題した基調講演を行ったので、その内容をご紹介したい(Photo01)。

  • 講演を行ったRafael Sotomayor氏

    Photo01:講演を行ったRafael Sotomayor氏(EVP&GM, Secure Connected Edge)。そういえばSotomayor氏、以前単独インタビューを行わせていただいたのだが、まだその記事を書いてない。申し訳ない限り

昨今のSmart XXXはどんどん進化しているが、その代償として複雑性が大幅に増しているのは言うまでもない(Photo02)。

  • 冷蔵庫の今昔

    Photo02:冷蔵庫の今昔。今昔というか、右は現在を通り超えて明らかに未来だが

その「複雑性」をもう少し分解したのがこちら(Photo03)。

  • 「1」と「2」はともかく、「3」はどうしろというのだ?

    Photo03:「1」と「2」はともかく、「3」はどうしろというのだ? という気もしなくはない

まず要求事項(Photo04)については、ある意味この業界で普通に言われている機能や要求という話で、これはそう珍しくはない。

  • :普段新製品などが出る場合は、この要求事項をいかに満たしているか、を論じることになる

    Photo04:普段新製品などが出る場合は、この要求事項をいかに満たしているか、を論じることになる

次が差別化要因(Photo05)で、ただここに挙がっているのはどちらかというとRequirementsの延長という気もしなくはないが、まぁRequirementsよりももう少し必要性は落ちる(無くても使うのに困るわけではない)という意味では差別化要因なのだろう。そして予見不能な事柄というのがこちら(Photo06)。まぁ昨今の状況を考えればこれも納得できる。

  • Photo05:ただ個人的にはRequirementを超えた、例えば使い勝手とか、見た目が猫型とか、そういう事がここに該当する気もするのだが

    Photo05:ただ個人的にはRequirementを超えた、例えば使い勝手とか、見た目が猫型とか、そういう事がここに該当する気もするのだが

  • Security vulnerabilitiesは予見不能

    Photo06:とはいえSecurity vulnerabilitiesは予見不能とか言ってないで対応しとけと思わなくもないのだが、まぁ世間的には予見不能に分類されても仕方がないところなのだろうか

こうした複雑性を乗り越えて提供されたサービスの例としてSotomayor氏が取り上げたのが台湾のEasyCardやiPASS(Photo07)、それとSmart Factory(Photo08)の事例である。ちなみにSmart Factoryは2021年度の数字でいえば世界全体のGDPの18%にあたる17兆ドルのマーケットがある、としている。

  • EasyCardは日本でいうSUICAに相当するものだが、通信方式がSUICAとは異なる

    Photo07:EasyCardは日本でいうSUICAに相当するものだが、通信方式がSUICAとは異なる

  • Smart Factoryを構成するための要素

    Photo08:Smart Factoryを構成するための要素。ちなみに協業例としてSchneider Electricの事例がビデオで紹介された

さてここからはNXPの製品の紹介になるわけだが、まず示されたのはおなじみのこちら(Photo09)だが、この前日の5月30日にNXPはi.MX9ファミリーのローエンドとしてi.MX91シリーズを発表した

  • ローエンドがMCX、ハイエンドがi.MX/Layerscapeで、間をi.MX RTでつなぐという布陣

    Photo09:ローエンドがMCX、ハイエンドがi.MX/Layerscapeで、間をi.MX RTでつなぐという布陣である

なのでてっきりここでi.MX 91の紹介をするのかと思ったのだが、それはあっさりパスして昨年5月に発表されたi.MX RT 1180を紹介した(Photo10)。

  • i.MX RT 1180を前面に出してくるのは妥当ではある

    Photo10:確かに現状これを超える性能の製品はラインナップされていないし、Cortex-M85もまだ搭載製品はないから、i.MX RT 1180を前面に出してくるのは妥当ではある

またローエンドのコントローラ向けにはMCXシリーズを紹介した。特にMCXシリーズに関しては、今後立ち上がるであろうEndpoint AI向けにeIQを利用することで迅速に対応が出来ることを強くアピールしていた(Photo12)。

  • むしろKinetisやLPCをMCXに置き換えてほしい

    Photo11:むしろKinetisやLPCをMCXに置き換えてほしい、というほうがNXP的には強く主張したいところなのかもしれない

  • eIQはNXPの独自のフレームワーク

    Photo12:eIQはNXPの独自のフレームワークだが、i.MX9ファミリー全部で利用可能(Ethosを搭載したi.MX 93だけでなく、NPUを搭載しないi.MX 91でもそのまま利用できる)ということで、これを強く推してゆきたいという意気込みを感じた

またSmart Factory向けにはN-AFEを利用することでより柔軟かつ高精度を実現できるとしており(Photo13)、i.MX RT 1180との組み合わせをアピールしていた(Photo14)。

  • N-AFEはいわばSoftware Defined AFE

    Photo13:N-AFEはいわばSoftware Defined AFEで、構成を自由に変えられるのが特徴

  • 別にi.MX RT 1180の性能がないとN-AFEの特徴が生かせない、というわけではない

    Photo14:別にi.MX RT 1180の性能がないとN-AFEの特徴が生かせない、というわけではないとは思うのだが

Smart Home向けには、昨年から同社が力を入れているmatterを前面に押し出し、matter向けのソリューションを改めて説明した(Photo16)。

  • こちらは特に新しい話はない

    Photo15:こちらは特に新しい話はない

  • 以前から特に違いはない

    Photo16:この情報もこちらの時から特に違いはない

ということで、案外に新しい話がなかったのがちょっと残念ではあった。ただNXPに限らず今回のCOMPUTEXでは組み込み系に元気がないというか新しい話がほとんど無かったことを考えると、基調講演に新しい話題が乏しかったのも致し方ない事なのかもしれない。