それぞれの医師を比較するにあたって、患者の要因(年齢、性別、主傷病、併存疾患など)、医師の要因(性別、年齢、年間診療患者数)、および病院の固定効果を調整することのできる回帰モデルを使用し(病院の固定効果を調整することで、同じ病院内で治療された患者を実質的に比較)、それらの影響を統計的に補正したとのことだ。

そして研究チームは、2016年~2019年に3428病院の1万7918人の医師が治療した32万9510人の患者(平均年齢79.8歳、女性が59%)の分析を実施。その結果、入院後30日以内の調整後死亡率はMD医師で9.4%、DO医師で9.5%と、ほぼ同等だったという。

また、退院後30日以内の再入院率は、MD医師で15.7%、DO医師で15.6%、入院日数は両医師ともに4.5日、入院医療費はMD医師で1004ドル、DO医師で1003ドルと、これらもほぼ同等だった。入院中の専門医へのコンサルト回数やICUの利用率や退院先(自宅や介護施設など)、画像検査や臨床検査の利用も同等であり、同じ病院で働いている両医師の提供している医療の質は、ほぼ等しいことが示唆された。

  • 同じ病院のMD医師とDO医師が治療した入院患者のアウトカムの比較。

    同じ病院のMD医師とDO医師が治療した入院患者のアウトカムの比較。(出所:東大プレスリリースPDF)

この結果の要因として、医学校における教育の標準化と卒後教育におけるトレーニングの標準化の2つが考えられるという。両養成校は認定機関は異なるが、どちらも厳しい認定基準に従っているため、医学校における教育内容にはほとんど差がない可能性が考えられるという。また研修システム上、MD医師とDO医師の両方が同じレジデントプログラムに参加することが頻繁に起こっており、医学校卒業後に受けるレジデントやフェローシップの研修が、両医師の診療方法の標準化に寄与している可能性も考えられるとする。

今回の研究では、過去には異なる教育内容だった両養成校で、今では少なくとも、入院患者のアウトカムに影響を与えるような教育内容の違いは見られない、もしくは仮に教育内容に違いがあっても患者のアウトカムに影響するようなものではない、ということが示されたこととなる。研究チームでは、日本においても医学部や臨床研修における教育内容の違いは存在するため、どのような違いが患者にとって重要で、どの違いは多様性として許容されるのか、今後の研究が期待されるとしている。