和歌山県立医科大学は、厚生労働省(厚労省)の大規模公開データ(NDB open)による全国2700万人余りのデータを用いて、都道府県単位で喫煙者の割合と平均寿命、全死因による死亡率、がんによる死亡率との関連を検討したところ、現在喫煙している人の割合が多い都道府県ほど平均寿命が短く、全死因による死亡率・がんによる死亡率ともに高いことが判明したことを発表した。

同成果は、同大 衛生学講座の出口佐和子氏、同 竹村重輝 助教、同 鈴木春満 助教、同 東山綾 准教授、同 青野直輝 大学院生、同 張岩 大学院生、同 藤吉朗 教授らによるもの。詳細は、和歌山医学会発行の雑誌「和歌山医学」に掲載されたという。

日本人の慢性疾患死亡の原因の1つとして喫煙が脳卒中・心筋梗塞などの循環器疾患やがん、肺の病気などの原因であることは知られているが、喫煙者の割合が都道府県の平均寿命と関連するかどうかを大規模データで検証した研究報告はなかったという。

そこで研究チームでは、厚生労働省(厚労省)の大規模公開データ(NDB open)のうち、2015年特定健診受診者データ(2015年に特定健診を受けた40~74歳の男女、約2700万人余り)を用いて、都道府県単位での喫煙者割合と、「平均寿命(2015年)」、「全死因による死亡率(2015年、年齢調整)」、「がん罹患率(2016-2017年平均、年齢調整)」、「がんによる死亡率((2016-2017年平均、75歳未満年齢調整死亡)」との関連を調べることにしたという。

その結果、現在喫煙している人の割合が多い都道府県ほど平均寿命が短く、全死因による死亡率・がんによる死亡率ともに高いことが判明したとする。

  • 都道府県単位の喫煙率と各種指標との関連性
  • 都道府県単位の喫煙率と各種指標との関連性
  • 都道府県単位の喫煙率と各種指標との関連性
  • 都道府県単位の喫煙率と各種指標との関連性
  • 都道府県単位の喫煙率と各種指標との関連性 (出所:和歌山県立医科大学発表資料)

また、喫煙のほか、高血圧や過剰飲酒なども死亡への関与が高いことが報告されていることから、喫煙率と平均寿命と、それらが独立して関係しているのかどうかの調査も同様のデータを用いて実施。その結果、「血圧高値」や「過剰飲酒」の要因を加味しても喫煙は平均寿命に悪影響を及ぼしていることが判明したほか、都道府県の平均寿命の格差(平均寿命のばらつき)のうち31%(女性)~45%(男性)が「喫煙」、「血圧高値(収縮期血圧≧140mmHg)」、「過剰飲酒(1一日あたり純アルコール換算:男≧2合、女≧1合)」の3つの要因で説明できることも分かったという。

  • 喫煙率と平均寿命と血圧高値と過剰飲酒の関係性調査

    喫煙率と平均寿命と血圧高値と過剰飲酒の関係性調査(出所:和歌山県立医科大学発表資料)

なお、今回の調査を踏まえ、研究チームでは、平均寿命をさらに伸ばすためには、防煙や禁煙といった喫煙への対策、高血圧、過剰飲酒への対策が重要であると考えられるとしている。