東京慈恵会医科大学(慈恵医大)は5月9日、二重盲検ランダム化プラセボ比較実験に参加した約10万人のデータをメタ解析し、ビタミンDサプリメントの連日内服により、がん種に関係なくがん死亡率が12%減少していたことを明らかにしたと発表した。

同研究成果は、慈恵医大 分子疫学研究部の浦島充佳教授を中心に、独・がん研究センター、米・ハーバード大学、ラホヤアレルギー免疫研究所、カリフォルニア大学サンフランシスコ校をはじめ、フィンランド、オーストラリア、ニュージーランドなどの研究機関が参加した国際共同研究チームによるもの。研究の詳細は、「Ageing Research Reviews」に掲載された。

ビタミンDは、主に体内の機能性たんぱく質の働きを活性化させることでさまざまな作用を及ぼし、その主な生理作用として、正常な骨格と歯の発育促進が挙げられる。またこのビタミンDは、日光にあたることにより皮下で生成される性質を持つ。

研究チームは、食道から直腸に至る消化管がん患者417人に対して、ビタミンDサプリメント(2000IU/日)を摂取する群(ビタミンD群)とプラセボ群に3:2の割合で振り分け、がんの再発あるいは死亡の数を比較する「アマテラス試験」を実施し、2010年から8年間データを蓄積した。なお同試験は、日光にあたることで生成されるビタミンDの性質や日本で実施される試験であることから名づけられたという。

試験の結果、ビタミンD群の5年無再発生存率は約77%、プラセボ群では約69%と、ビタミンD群では再発・死亡がプラセボ群と比較して約8%少なくなったとのこと。しかしこれは統計学的に有意といえる差ではなかったとする。

この結果から見て取れた傾向をもとに、研究チームは以下の2つの仮説を立てたという。

  • ビタミンDサプリメントは、術後早期ではなく遅発性のがんの再発・死亡を抑制する
  • 病理免疫組織でp53が強陽性である(p53に変異がある)場合に対して有効である

前者について、サプリメント内服開始後1年半までは両群での再発・死亡率に差はほとんど見られなかったものの、その後差が開いたとする。サプリ内服開始後1年未満の期間を除外して解析した場合、ビタミンD群の5年生存率は約85.8%、プラセボ群では約76.4%であり、これは有意に再発・死亡リスクが抑制されたといえるとしている。

  • アマテラス試験におけるビタミンD群とプラセボ群の間の(左)再発・死亡累積ハザード曲線の比較と(右)遅発性再発・死亡累積ハザード曲線の比較。

    アマテラス試験におけるビタミンD群とプラセボ群の間の(左)再発・死亡累積ハザード曲線の比較と(右)遅発性再発・死亡累積ハザード曲線の比較。(出所:慈恵医大プレスリリース)

また後者については、アマテラス試験の病理組織検体を事後解析し、がん抑制たんぱくの1つであるp53が10%より多く染まっていたがんをもつ患者だけに対象を絞った場合、5年生存率はビタミンD群で約79%であった一方、プラセボ群では約57%であり、ビタミンDが有意に再発・死亡リスクを抑制していたとする。

さらにp53陽性がんにおいて、「サプリメント内服開始1年未満の再発・死亡を含めない」という条件で事後解析したところ、ビタミンD群の5年生存率は約88%、プラセボ群は約62%と、ビタミンDが再発・死亡リスクをおよそ3分の1にまで抑制していたとしている。

  • p53陽性がん患者におけるビタミンD群とプラセボ群の間の(左)再発・死亡累積ハザード曲線の比較と(右)遅発性再発・死亡累積ハザード曲線の比較。

    p53陽性がん患者におけるビタミンD群とプラセボ群の間の(左)再発・死亡累積ハザード曲線の比較と(右)遅発性再発・死亡累積ハザード曲線の比較。(出所:慈恵医大プレスリリース)

ただし慈恵医大の浦島教授は、「現段階ではビタミンDサプリメントの摂取が有意にがんによる死を抑制すると言い切ることはできない」とする。なおその理由としては、実験全体では有意な結果を得たものの、アマテラス試験を含む個々の試験においては有意な結果を得られていない点が挙げられた。

そこで研究チームは、これらの事後解析で立てた2つの仮説を証明するべく、慈恵医大付属病院と国際医療福祉病院の他施設共同研究という形で、2022年1月より「アマテラス2試験」を開始した。

同試験では、がん患者、特にp53陽性がん患者において、術後2か月以内から試験終了までビタミンDサプリメント(2000IU/日)を連日長期投与する群と、プラセボ群とにランダムで振り分け、遅発性(投与開始から265日以降)の再発、あるいはすべての原因による死亡・ハザードリスクを比較。これにより、ビタミンDサプリメント投与のがん抑制における有効性を検討するという。また、有害事象(高カルシウム血症など)の発現率も群間で比較し、同サプリメント投与の安全性についても検討するとしている。