日本初のEUV導入で1γノードによるDRAMの製造を計画
Micron Technology(マイクロンテクノロジー)は2023年5月22日、マイクロンメモリジャパン広島工場にて、次世代DRAMの開発・製造および、半導体人材の育成に向けた広島県との連携に係る共同会見を開いた。
同会見には、マイクロンのサンジェイ・メロートラ社長 兼 CEOをはじめ、マイクロンメモリジャパンのジョシュア・リー代表取締役、同社開発部門 CVPの白竹茂氏、広島県知事の湯﨑英彦氏、東広島市市長の高垣廣德氏が参加した。
会見にてマイクロンは、日本政府による支援を前提に最大5000億円を投資し、日本ではじめてといわれているEUV(極端紫外線)技術を導入、および1γノードによる次世代DRAMの製造を行うと発表した。1γノードの導入は、2023年現在で同社の最先端DRAMノードとなる1βの開発に続くもので、マイクロンは同社初となる1βD RAMの量産を2022年より同広島工場で開始している。
同社は、1γノードによるDRAMの製造で、急速に台頭している生成系AI(人工知能)アプリケーションに代表される新たな技術革新の波をエンド・ツー・エンドでサポートしたい意向だ。
EUV技術といえば、日本には高圧ガス保安法があり、導入には障壁となると言われていた。2022年11月に同広島工場で行った1βDRAMの量産開始セレモニーでも、「広島工場で将来的にEUV導入の可能性を見据えて、日本政府に規制緩和の働きをしている」と同社SVP グローバルオペレーション担当のManish Bhatia 氏は述べており、同時に広島県も2022年6月に国に規制緩和を要請。
そうした動きを踏まえこのたび、マイクロンは2025年~2026年にかけてEUV露光装置を導入し、1γ DRAMの生産を日本で開始する見込みを示している。EUV露光装置の導入に伴った新棟の建設や拡張については、広島工場にてEUV露光装置の導入を視野にすでに拡張を行ったため、さらなる新棟の建設や拡張は今のところ予定はないとした。
メロートラCEOは「日本での1γノードDRAM技術の量産へのEUVの導入は、エコシステム全体を進展させ、最先端の半導体製造における日本の地位を向上させる」と言及した。
広島県との強固なパートナーシップを構築
メロートラCEOは、なぜ広島県なのかという質問に対して、「広島拠点の優秀なチームは、過去10年間にわたり業界をリードするメモリ技術の開発と製造の中心的役割を担ってきた。私たちはより強固な半導体インフラの構築と、そこで求められる高度なスキルを持つ人材の育成を進めていくにあたり、広島県との強い繋がりに感謝している」とし、広島工場に対して信頼感をみせた。
また、湯﨑英彦 広島県知事も「広島工場における長期的な投資は、幅広い半導体関連企業の拠点化や、地元企業との取引拡大につながるため、県経済の発展に一層の弾みがつくものと期待している」と述べ、今回のマイクロンの決断に胸を膨らませた。
さらに同社は、半導体産業の活性化を目指し作られたカリキュラムである「UPWARDS for the Future(半導体の未来に向けた人材育成と研究開発のための日米大学パートナーシップ)」の創設に参画。同地域にある広島大学を含めた日米の11大学とともに、優秀な半導体人材のパイプライン拡大を目指すとしている。
G7に対抗する中国の表明に言及
5月19日から21日まで同県で開催されていたG7サミットにおいても、「経済的強靱性・経済安全保障」に関する首脳声明にて、「特に重要鉱物や半導体および蓄電池などの重要物資について、強靱なサプライチェーンを強化していく」と発表されており、日本および世界全体で半導体産業を活性化していく動きがある。
一方でこのG7の声明に対抗するかのように、中国のインターネット規制当局はマイクロンの製品について、中国国内の重要な情報インフラ事業者による調達を禁じると発表。それに対してマイクロンは同会見にて、中国が下した決断に対してよりよい対応ができるようにしたいと述べたうえで、具体的な決定はこれから考えていくとした。