Infineon Technologiesは5月4日、2023会計年度第2四半期(2023年1~3月期)の決算業績を発表した。

それによると同四半期の売上高は、前年同期比25%増、前四半期比4%増の41億1900万ユーロとなったという。また、2023年度第3四半期(4~6月期)の売上高見通しは40億ユーロとしているほか、通期見通しを従来の155億±5億ユーロから162億±3億ユーロに引き上げたとする。

同社のJochen Hanebeck最高経営責任者(CEO)は、「スマートフォン(スマホ)、PC、家電製品などの消費財市場の改善はまだ見られないが、それでも将来の業績について全体的に自信を持っており、今年度の売上高と利益率の予想を上方修正した」と述べている。

新たな300mmファブの起工式をドレスデンで開催

また同社は5月2日、同社史上最大の投資(50億ユーロ超)となる独ドレスデン新工場「Infineon Samer Power Fab」の起工式を既存工場の隣接地で行った。欧州委員会(EC)委員長Ursula von der Leyen氏やドイツ連邦首相Olaf Scholz氏はじめ多数の要人が出席した。今後、2023年秋より工場建屋の建設を開始、2025年より装置の搬入を実施し、2026年秋に稼働させる予定で、約1000人の高度な資格を持つ雇用が創出されるという。新工場は、「One Virtual Fab」としてオーストリアのフィラッハファブと一元管理され、300mmウェハを用いてパワー半導体などの量産が行われる。新工場で生産される半導体製品の年間売上高は50億ユーロ規模になるという。

独連邦経済・気候変動省(BMWK)がプロジェクトの早期立ち上げを2月に承認したため、欧州委員会による法的補助金の審査完了前に建設を開始したとのことで、同社では、欧州CHIPS法による欧州委員会の補助金とドイツの補助金として10億ユーロを申請するという。

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  • Infineon Smart Power Fab起工式の様子 (出所:Infineon)

  • ドレスデン既存工場に隣接した新たなファブ完成予想図と建設計画

    ドレスデン既存工場に隣接した新たなファブ完成予想図と建設計画 (出所:Infineon)

Jochen Hanebeck CEOは、「世界の半導体需要は今後、再生可能エネルギー、データセンター、エレクトロモビリティへの高い需要を考慮して、強力かつ持続的に成長していく。私たちの新しい工場は、2020年代後半に顧客の需要に応える。工場稼働に際して脱炭素化とデジタル化を推進していく」と述べている。同社は巨額を投じてシリコンパワー半導体の300mm化を推進し、パワー半導体市場でライバルに大きく差をつける作戦にでている。

中国SiCウェハメーカー2社と長期契約購入を締結

さらに、同社はSiCウェハサプライヤの多様化の一環として中国のSiCサプライヤTanKeBlue(北京天科合達藍光半導体)ならびにSICC(山東天岳先進科技)とSiCウェハならびにブール(結晶の塊)の長期供給契約を締結した。中でもTanKeBlueとは、第一段階として150mm SiCウェハの供給に加え、将来的には200mm SiCウェハの供給することで、大口径化を支援するとしている。

Infineonでは現在、SiCデバイスの製造能力を増強させており、フィラッハ工場に加え、マレーシア・クリムの新工場でも2024年より生産を開始する予定としている。

同社チーフプロキュアメントオフィサーであるAngelique van der Burg氏は、「SiCに対する需要の高まりに対応するため、マレーシアとオーストリアの生産拠点で製造能力を拡大している。可能な限り最も包括的な製品を顧客に提供するために、SiC技術への投資を倍増させている。我々は、顧客の利益のために世界中の複数サプライヤから調達することでSiC材料の安定確保につとめている」と述べている。

新製品も続々投入

このほか同社は、産業機器、ヘルスケア機器、ロボティクス、ドローン、掃除機、パワーツール、ドッキングステーションおよびスマートフォン(スマホ)充電器など向けワイヤレス充電トランスミッタIC「WLC1150」を発表した。

同製品は、独自の高出力充電プロトコルと4.5~24Vの広い入力電圧範囲を使用して、50Wのワイヤレス電力伝送をサポート。128KBのフラッシュ、16KBのRAM、およびADC、PWM、タイマーなどのさまざまなペリフェラルを備えているほか、Arm Cortex-M0プロセッサも搭載。フルスタックファームウェアには、アプリケーション固有のFOD、インバンド通信、センシング、保護、およびその他のシステムパラメータのカスタマイズを可能にする多くの構成可能なオプションが用意されており、さまざまなワイヤレス充電ソリューションの開発が容易になるとしている。

また、電動パワーステアリング、ブレーキシステム、切断スイッチの新しいゾーンアーキテクチャなどに対応する車載向けの「OptiMOS7 40VパワーMOSFET」も8月より受注を開始することも発表した。

TDSON-8、HSOF-5、HSOF-8、上面冷却など、さまざまな堅牢な自動車用パワーパッケージで提供され、スイッチング損失の低減、安全動作領域(SOA)の堅牢性の向上、および高アバランシェ電流能力を提供することで、将来の高効率自動車アプリケーションの設計を容易化するという。

さらに、 産業用SMPSからサーバ、テレコム、太陽光発電、モータードライブ、テレビ、照明システムなど向けにGaNを用いた600Vハイブリッドドレイン埋め込み型ゲートインジェクショントランジスタ(HD-GIT) HEMTも発表。GaN GITテクノロジは、堅牢なゲート構造、内部静電放電(ESD)保護、および優れた動的RDS(on)性能の独自の組み合わせを特長としており、Si技術と比較して、絶縁破壊電界は10倍、電子移動度は2倍、出力電荷量は1/10、逆回復電荷量はゼロ、性能指数(FoM)は10倍といった性能を提供するという。

上面および底面冷却(TSC/BSC)JEDEC準拠パッケージで提供され、これにより高電力密度、エネルギー効率の向上、および総システムコストの削減を備えたコンパクトで軽量な製品開発が可能になると同社では説明している。