Coltテクノロジーサービスは4月4日、英国Colt Technology ServicesのCMOを務める水谷安孝氏による説明会を開催した。同氏はAIを活用したデジタルマーケティングの実績を評価され、英Data Economyマガジンの「世界で最も影響力のあるマーケッター50人」に選ばれた人物だ。
説明会では、初めにColtテクノロジーサービス 代表取締役社長の星野真人氏が、同社のビジネスの最新動向を紹介した。同氏は「ここ数年、DX(デジタルトランスフォーメーション)が進んだことにより、クラウドシフト、柔軟なネットワーク、SD-WANのオンデマンド接続のニーズが高まっている」と説明した。こうしたニーズに応えるべく、同社は「Colt クラウド接続サービス」「SD-WAN」を提供している。
また、星野氏は、日本はデータセンター市場が盛り上がっており、ハイパースケーラーのデータ量が増えていることから、「データセンターが集まるところにネットワークを引く、これがわれわれの戦略」と語った。例えば、関西ではけいはんな地区でキャパシティの増加を計画しており、土地を探しているそうだ。
グローバル戦略「顧客とのサスティナブルなビジネス成長の実現」を
続いて、水谷氏がグローバル戦略とCMOとしてのビジョンについて説明した。同氏は今年1月、通信の影響が社会インフラと同等に大きくなってきたことから、ミッションステートメントを「デジタルの持つ力を融合し、グローバルなデジタルインフラを活用したソリューションをお客様に届ける」に刷新したことを紹介した。
「ネットワークだけでなく、セキュリティも確保した形で、つながる先を見て、デジタルインフラの定義を見直した。国を越えて、デジタルインフラを使えるようにすることで、価値が上がる」(水谷氏)
そして、同社のグローバル戦略は「お客様とのサスティナブルなビジネス成長を実現する」を目的に据え、これを実現する手段、方針、構築するソリューション、促進することを定めている。
例えば、手段に位置付けられている「テクノロジージャイアント戦略」とは、どの国にいってもColtの基盤が使えることを実現するための戦略であり、水谷氏は「日本は先を行っているという印象」と述べた。
また、構築すべきソリューションについては、「柔軟性に富むソリューションはオンデマンドで操作できる必要があり、世界各地でかつ面で使えるようにする」(水谷氏)という。
こうしたソリューションを展開するには、「シンプルであることが重要であり、これにより自動化が実現される」と水谷氏。そして、「何を自動化するかを考えるのは人であり、人の手によってしかシンプル化と自動化は実現されない」と、同氏は付け加えた。
AI導入により、売り上げ増と顧客満足度向上を達成
次に、水谷氏は今年度のCMOのビジョンを紹介した。ビジョンは「AIの活用による顧客体験の劇的な変化」「Machine Experience (MX) の台頭」「マーケターの再定義」の3点を柱としている。ChatGPTに注目が集まっている今、これらのうち、特に気になるのはAI活用だろう。
水谷氏は、AIの活用する背景について、次のように説明した。
「人々がハイブリッドワークで働くようになると、タッチポイントが変わる。サプライヤーと客が接する時間が減っており、ガートナーは企業間の商談の80%が2025年までにデジタルチャネル上に移行すると予測している。こうした状況を踏まえ、当社は顧客との接し方を見直しており、AIを使って分析を始めている」
具体的には、内部のデータと外部のデータを掛け合わせて分析を行っており、水谷氏は「影響が大きいのはソーシャルメディアの投稿。アウトプットとして、売り上げを見込める顧客、コロナ禍の影響を大きく受ける顧客、ビジネスリスクを伴う顧客を出している」と話した。
AIを導入してからの変化として、顧客セグメントに応じて前年度比120&~400%の案件規模の拡大を確認しているほか、顧客満足度は年平均のNPSスコアが54ポイントから66ポイントへ上昇したという。
加えて、興味深いのがコロナ禍の影響を特に大きく受けた顧客250社に対し、特別措置を提供したことだ。コロナ禍が落ち着いてきた今、これらの顧客からは感謝されているという。
AIの台頭で変わりつつあるマーケターの役割
上述したように、AIの導入効果を享受している同社だが、水谷氏はAIの台頭により、マーケターの役割が変わってきていると指摘した。巷では、ChatGPTの進化により、「人がやる仕事がなくなるのでは」という懸念が再燃している。
水谷氏は、「AIによって、調べることは自動化されるため、マーケターは結果をレビューすること、 どんな情報をAIに与えるかを検討することが仕事になる」と述べた。
さらに、「データの使い方も課題となる。マーケターは、集めたデータをどう分析するか、どこにどういう接続が必要かを考える必要が出てくる」と水谷氏。
例えば、ChatGPTを活用して商用テナントビルの分析を行い、その結果を生かすのがマーケターの仕事となる。
なお、水谷氏はChat GPTを活用する上での注意点について、「企業のアカウントを使うことで、個人が特定されるという懸念はカバーできると考えられる。また、『個人情報や機密情報を使わない』など、ルールを決めることが必要」と語っていた。